朝、は揚羽の上で目覚めた。
そうだった、この男の上で寝てしまったんだった。硬い胸板の上に乗りながら、はまだ鈍い頭で考えた。
革命軍に所属しているけれど、今現在タタラの船からは下りており、揚羽と二人で色々やってる道中だった。色々は本当に色々だ。船に必要な物の手配もあるが、タタラ軍の補助も行うし、情報操作も収集も、その他諸々色々やっていた。途中でバタフライ一座に会えたら一緒に公演もしながら。
その間は二人っきりだった。太郎ちゃんに会うことはあるが、基本的に二人で旅をしていた。
寝食を共にし、同じ時間を共有し、同じ空間を過ごす。
それが、自分たちにとってどれだけのものか。
揚羽が共に旅をする相手として選んでくれるだけでも嬉しいのに、今現在揚羽とそういうことをしても別段何も言われないような関係だ。
多分人生の中で今が一番絶頂期とか、そういうものな気がする。
(しかしまあ、綺麗な寝顔だこと)
男のくせに、と思うけれど別に女顔、というわけでもないから不思議だった。例えるなら本当に綺麗な顔なのだ。女にも男にもなれるこの男の顔は、整っていて綺麗だった。男女関係なく見惚れさせることができる顔なんてそうそう拝めないかもしれない。
(さてさて、今日はどうしようかねー)
食事を作るのも慣れてきたもので、こうやってどうしようかなーと考えたりもする。
その後はまた揚羽と仕事をしたり、別々に分かれて行動したり、まあその日その日でマチマチではあるのだけれど。でも必ずこの人は拠点に帰ってくるし、戻ってくれば必ず自分と共に寝床に着く。
国王軍その他、敵と呼べるような奴らと遭遇すれば切ったりもするが、そういうことを除けば今はとてもイイ感じの生活なのかもしれない。多分、二人一緒になればこういう日が続くのだろうなと、何とも儚い幻想を思い描ける程度に。
(今この生活が幸せって言ったら、揚羽はどんな顔するかなー)
あんまり想像できないのは、そういう風に考えても自分が口にすることは絶対ないだろうという確信があるからだろう。
揚羽を確実に困らせるし、今はそういう現状でもないから。
でも思うのだけは自由だし、この状況が自分にとってとてつもなく幸福なのは事実だった。
揚羽も、そういう気持ちが少しでもあれば、それは女としてとても幸せだなとは思い願った。
(こうやって抱かれるだけでも幸せだと思えたのにね。やっぱり私欲張りなのかな)
もう少しこの顔を拝みながらゆっくりと目覚めるとしようと、更に欲張りな、それでいて贅沢なことを思いながら、はまた揚羽の寝顔を見つめた。
***
「食べたいものある揚羽」
「」
「胃袋に入るの限定で」
「…食べれるなら何でも良い」
「好きなものないの」
「別に食べれれば何でも良い」
(が作るなら、何でも良い)
「(…思っても言えない辺りオレもまあヘタレだな…)」
「マダムたちから貰った差し入れ食べきっちゃうか。この間作ったの結構好きでしょう揚羽」
「…何で解った」
「いや顔見てたら解るって」
「……(マジかこいつ何もんだ)」
の腰を後ろから抱きながら、結婚生活ってこんなもんなのかなって泣きそうになったのは、揚羽だけの秘密だった。
13/01/06
20万打御礼企画
群青三メートル手前様から君酔二十題
15.限りなく幸せに近い現状
揚羽でリクくださったyanaさん、黒兎さん、結花さん、ありがとうございました。