私のいとしいおひめさま

20万打御礼企画

女の子はみんな可愛いものだ。
バッドは真剣に、そう思っている類の男である。

「全員がか?ありえないだろその思考回路」
「何でさ。女の子は全員可愛いよ」
「いやどう見てもあそこ歩いてるブサイクなのは違うだろ」

そうクリフォードに指を指された側を見ると、確かに少々ぽっちゃりしていて目鼻立ちがぼんやりしている印象の女子が通っていた。
別にバッドは感性がおかしいわけではなく、一般的にああいう子がそこまでモテないことは、理解している。理解はしているが、自分の中でのボーダーラインはそんなこと関係ない。というか、ああいう子だって充分に可愛いじゃないか。
解っていない、そういう顔をしながらため息をついてバッドはクリフォードに否定の言葉を投げかけた。

「あのなあ、顔面偏差値とか、体型とか、そういうんじゃなくて女の子はそれだけで可愛いもんだろ」
「………」

コイツ天性というか真性だな、とその言葉を聞いてクリフォードは感嘆した。女子だから可愛いということか。解らない世界だ。
クリフォードからしたら不細工は不細工でしかありえない。それ以上もそれ以下もないだろう。性格は別として。
視覚に頼って生きている人間は、見た目というものがやはり一番印象が強く、それだけでも損得勘定が生まれたりする。動物だって綺麗な羽をしているオスの方がメスも近寄ってくるということだって、あるだろう。孔雀が確かそうではなかったかと曖昧な記憶をクリフォードは掘り起こす。ライオンだったら強ければ良いだけだが、そういう綺麗めの動物はやはり派手だったり綺麗だったりと、そういうことでモテるものだ。
まあしかし、こいつの場合は全員平等ということで接していないと駄目なものなのかもしれない。そう思えばクリフォードとしても納得できた。だが理解できない世界である。クリフォードは自分の愛した女が一番だからだ。平々凡々だろうと絶世の美女だろうと、周りがどうであろうと関係ない。自分の中で一番の女がトップであり、他の女なんか芥も関係ない。顔が良いだのはまた別ではあるが。

「女子は全員平等に可愛いっていうことか?」
「そうだねー。まあ、世の中の女の子はそうかな」

そうか。なら、お前の彼女のはどうなんだ?あの歩いている女子と同じ程度の可愛いレベルか?
そうクリフォードは言おうとしたが、その前にバッドが牽制するかのように先に遮った。

「ああ、でも、は違うから」

いつもの笑顔のくせに、声音は何よりも優しかったようにクリフォードには感じられた。それだけで充分に真剣だったことが解る。
少しだけ意外だったかもしれない。いつもいつも、ハイテンションなノリでのことを褒めちぎり、惚れたときも一方的に自分たちにがいかに可愛い女かを説いてきた男だったから、そういう対応もできるのかとクリフォードは見方を改めた。

はさー、何だろう。いや可愛いんだけどさ。それ以外の何かがあるんだよね。俺の中で女の子って、可愛いしかいないんだけど。でもそうだなあ、に関しては、可愛くて大好きでって、付くのかもしれない。そこら辺歩いている子も、俺のファンも、皆可愛くて俺のこと好きになってくれたなら愛せるけど、自分からすっごい可愛くて凄く愛しいと思えるのは、だけかな」

何かねー、微妙なんだけど、その差かなーと、バッドははにかみながら言う。
何だその微妙すぎる差は。クリフォードの瞼は思わず下がった。意味が解らない。

「うーん、そうだな…女の子はみんな可愛いじゃん」
「そこからして既に突っ込みたいし色々解せんが、まあとりあえず納得はしてやろう」
「ああうん。でもはさ、んー…可愛くてキラキラしてる」
「………」

あ、コイツ本当にヤバイ男だったかもしれない。クリフォードは久しぶりに冷や汗をかいた。
多分これ本気で言ってる。ヤバイ。

「え、ない?好きな子が一番綺麗で可愛くって、色づいて見えるのって」
「………」

いや言いたいことは解らなくもない。男の目からしたらそういことは多々あるにはある。
しかし本当にそんなこと経験していて言葉にしてしまうのはコイツだからだろうか。クリフォードは今初めてこの男を凄いと思った。顔だけは整っていると思っていたが、ここまで真性のスターだとは思わなかった。

「まあってすっごい気も利くし若く見えて可愛いし?しかもセンス良いし料理の腕も良いし、日本人だから味の良し悪しも凄い解るし?それでいてアメリカに来て自炊する行動力とか活発的なところもあって、でも俺の一言で顔を赤くする愛くるしいところもあるしでもう最高だよね!」

最終的にいつものバッドの惚気になった時点で、クリフォードは話を聞くのを止めた。結局こいつはいつも通りだった。

「つまりは、一番可愛くて愛しくて素敵な女の子はってことかな!」



13/04/25
群青三メートル手前様から
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09. 私のいとしいおひめさま
リクくださったヒヨさんありがとうございました。
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