未だによく解らないと思う。それが口に出ていた。

「何がだ」
「貴方自身が。本当によく解らない」
「ほう?」

言ってからドンは何故かニヒルに笑った。やはり彼は10代には見えない。おかしい。何故あの大統領のおじ様と同じか…それ以上に見えるのか。遺伝子は謎でいっぱいだ。というよりも、何なのだろうか彼のこの貫禄は。自分がいかに子どもで卑小なのかがよく解る。

「俺が解らないと?」
「解らないわねえ。…いつも女を侍らしているくせに、何故私にまで手を出すのか」
「ああ」

相変わらず彼は笑っていた。しかし笑っている彼の方がそれっぽい気がした。悠然と構えて、いつも自分を誇りに思って生きていれば良いと、思うのは自分の願望だ。そうでなければ彼ではないと、そう思う。

「グラマラスで綺麗な女性を隣に置いておけば良いのに、何で私をここに置いておくの?」
「解らないのか?」
「…まあ、それなりの感情を向けていただいてる、と思ってはいるけれど?」
「正解だ」

My Dear.と言われ頭を撫でられた。髪を梳かれたのではなく、頭を撫でられたのだ。何だこの年の差が有るような行動は。自分は同い年なのに年下扱いか。
まあドンとの身長差を考えれば撫でやすい位置に有っただけかもしれなかった。

「でも尚更解らないわ。あんなにも綺麗な女性が沢山居るのに何故私?謎過ぎるわね」

更に言わせてもらうなら、何故黄色人種の自分を相手にしているのかと思った。偏見でしかないが、彼は何故か白色人種しか愛せなさそうな気がした。これはによる個人的なもの凄い偏見だった。正直な話、こちらの国では人種差別がまだあると聞いてドンはそういう人間に近いと感じたのだ。それを上手く悟らせないようにするが、結局結婚し、愛するのは同じ白色人種だけではないかと勝手に思っていた。だからこそ自分を相手にしている彼に驚き不思議に思う。
貧相な身体しか持っていないし、親は権力や冨を持っているが自分には何も無い。自分にその権力やら冨が来るわけでもない。親のものは親のもので自分のものではない。それは彼も承知のはずだ。だから自分と接するメリットは本当に何処に有るのだろうか?

「何故そう思う?俺がお前を隣に置いておくことは不安や謎を感じるようなことか?」
「…いや、愛されているなあとは良く感じますが」
「それで良いだろう」
「いやだってねえ。女侍らすの止めるわけでもないし、でも結局家に呼ぶのは私だけみたいだし」

よく解らないわ、そうは続けた。解らないことだらけだ。最初に彼にキスされたときも、抱かれたときも、結局解らないままなのだ。彼は解り易いようで解りにくいとは思う。結局一人に絞れないのだろうか?しかし自分は多分他の女性よりも愛されている、気がする。
嬉しいけれどやはり複雑だった。まず女を侍らし続けるあたりがもの凄くよく解らない。自分は一体どうすれば良いのやら。
解らないというよりもやはり複雑に思うし不安を覚えるのだ。自分は日本人で貧相な身体で、ドンのような頂に立つような者ではない。無いものだらけで何故彼に構われるのかが解らない。けれども自分はそれなり以上に彼を好いているようで、その彼のよく解らない思考が不安に思うのだ。やはり次元の違う人と居ると解らないことだらけだ。
一瞬の間の後、ドンの声が続いた。部屋に響く低音が耳に入る。

「何を不安に思う?俺からキスを送るのはお前だけだろう」

そんな言葉に何故か納得して不安が殆ど解消されてしまっただった。



09/05/05
たった一人を見つけても彼は女を侍らすのは止めないだろうなあと勝手に思いましたすみません。
あと彼はやはり白色人種が一番だと思っているのではないかと勝手に思ってます本当すみません。
ドンは愛してるとか言うのかと自問自答。これくらいのことは言ってくれそうですがそれ以上は言いそうにないなと妄想してます。
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