ふたつの掌の間をやさしさが行き来する

20万打御礼企画

その日は、暖かかった。だから油断してしまったのだ。

「う、わ。寒っ!」
「そうッスねー。やっぱこの時期昼と夜じゃ気温差凄いッスね」
「うわー失敗した暖かかったから手袋持ってきてないんだよー」

寒い寒いと二人して言いながら帰り道を歩く。心なしかどちらとも早歩きだった。

「部活やってるときはやっぱり気になったりはしない?」
「そっスねー、最初寒くても走りこみしてれば暑いし。終わって汗引いた辺り寒いっスけど」
「やっぱそっかー」

体調管理大変だよねー、とはしみじみ言う。こういう何気ない気遣いが一休としては嬉しい。何か、苦労を解ってくれて何故だか嬉しい。
風邪を引こうものなら先輩からも監督からも色々ネチネチねちねち言われるので、本当に気を使うことなのだ。授業とかではなく部活主体の生活である。まあ推薦で入ったから別に構わないのだが、もう少しチームメイトから心遣いが欲しい年頃である。

「うわー本当寒い!」
「……」

流石にもうコートを着ないせいか、ポケットに手を入れるということもできない有様である。寒いことこの上ない。
ぷらぷら動くの手をちらちら一休は見て、顔を赤くする。思っただけでこんなにも赤くなるのだから、実行したらどうなるのだろうと自分が不安になってしまう。
ただこの機会を逃すと自分自身どうやって行動すれば良いのかも解らない。
どんな対応をすれば良いのか解らないことだらけだけれど、実行力がないわけでない一休は、ちょっとでも決意したら実行できる程度の気概はあった。

「!」
「うわっ、鬼冷たっ!!」

自分側のの手を握って、その冷たさに驚く。何だこれどうしてこんなに冷たくなるんだ。大丈夫だろうか。

「大丈夫っスかこれ…」
「んーん、寒い。……一休君の手すっごい温かいね」
「部活後ですし」
「ん、あったかーい」

冷たくて嫌になったら離してねと言われたけれど、そんなことできるはずもなかった。


***


「一休君一休君、今日も手繋いで帰りたい」
「っ!ハイっす勿論っス!」

次の日から、そうやって手を繋いで帰れるようになった。



13/04/25
群青三メートル手前様から
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16. ふたつの掌の間をやさしさが行き来する
一休でリクくださった方ありがとうございました。
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