阿含と雲水
「阿含で本当にいいのか」
「じゃあ雲水が貰ってくれるの?」
「……他のことは笑いながら見逃してくれるだろうが、それだけは阿含が許さない」
「んふふ~、でしょう」
だからねえ、阿含でいいのよ。
雲水は困ったような、どうしようもない顔をしながら「後悔だけはしないように」とだけ告げてきた。
雲水と阿含
「俺にしとけばいいだろ」
「やだね靡いたら雲水ともう逢わせてくれなくなるでしょう」
「ハッ、当たり前だろ俺の女になるんだからな」
「そうやって雲水の女奪うの止めなよ」
「なびく女のほうが悪ぃーわ」
「それはそう。でもあんたブラコンこじらせすぎるのどうかと思うよ」
「あぁ?」
「自覚なしもやべーわ」
筧駿
「先生って言うのは止めろって。同い年だろ」
「尊敬とか敬意を持ってる場合年は関係ないと思う」
「……俺は対等でいたい」
「そっかあ。解った筧くん」
「ねえもしかしてあのとき対等が良いって言ったのって私のことそういうつもりで見てた?」
「他に何かあんのかよ」
「筧先生は解りにくいなあ」
「おい」
「駿くんは口下手ですねえ~」
「……悪かったな」
大和猛
「試合かあ。見に行ってもルール解らないしなあ」
「点取りゲームなだけだから、解らなくても楽しめるとは思うけどな」
「っていうか今まで特に見に来いなんて言わなかったのにどうしたの」
「……チームメイトの彼女がほぼ毎回試合を応援しに来てるのを見て、少し羨ましいな、とは」
「…………えっ猛ってそういう感情あったの……」
「俺のことを何だと思ってるんだ」
何だか可愛かったし失礼なことを言ったので、次の試合は見に行くことにした。
クリフォード
「ねえこっちとこっち、どっちが似合う?」
「俺から見て右。左はあり得ねえ」
「形可愛いんだけど」
「お前にその色はねえよ。そっちの端から二番目で我慢しろ」
「……クリフは視野が広いわねえ」
「もう少しいい褒め方はねえのか。おいそこのやつ当ててみろ」
「やだ本当、私の好みちゃんと解ってるんだから」
「さっさと終わらせて帰るぞ」
「ねえでもリップ見たいの」
「……ああ、俺がいなかったときに買って失敗したやつか」
「私もうクリフがいないと買い物できないかも」
「ハッ」
ドン
「My Dear」
そうやって呼ぶドンの声が、とても優しいものだと解っている。
そうやって言いながら、いつもと違う笑い方をして目を細めているのを知っている。
そうやって、他の女性たちとは違う対応をしていることを、実体験している。
「……お前は日に日に、綺麗になるな?」
「あらまあ」
綺麗になったのは、そうやって呼んでくれる貴方のおかげだと、さてどうやって表現すれば彼にもっと伝わるだろうか。
「ドンのおかげね」
にんまりと笑ってそう言えば、彼はまた私のことを愛しそうに呼んだ。
25/01/29
1/26 TOKYO FES Jan.2025、光速タッチダウンに参加したときの無配でした。