「おめでとパンサー!」

そう言って泣き笑いして言ってくれたことが、堪らなく嬉しかった。





プロに入ることが決まって、彼女は凄い喜んでた。ばーちゃんは泣いてたけど、は泣いて笑ってた。
おめでとうって言ってくれるだけじゃなくて、泣いてくれたことが嬉しかったのかもしれない。
自分のためにそうやって泣いてくれたのが、少しだけ自分は他の人と違う位置に居るのではないかと思わせた。
やっと、プロになれた。お金も入って貧乏じゃなくなった。
これなら、男として見てもらえると、思った。

「もう雲の上の人だねパンサー」
「…そう?」
「うん」

プロ入り契約などで忙しかったけれど、やっと時間が作れた。ペンタグラムの仲間や学校の仲間とも会いたかったけれど、他の時間でも会えるからと思ってと逢うことを優先した。からもプロ入りのお祝いをしたいと言ってくれたから、丁度良いと思って約束を取り付けた。
何とも情けないことに昼食を奢ってもらってしまった。お祝いと言って譲らなかった彼女の気迫に負けてしまった自分が男として不甲斐なかった。
祝ってくれるのは、とても嬉しいのだけれど。
昼食を食べたあと公園を二人で散歩する。いつもは走って通る場所が、少しだけ違う景色に見えた。

「こうやって会えなくなるねえ。ゴシップに載っちゃうかもしれないし」

だから、とは続けた。

「あんまり軽はずみに女の子と会ったら駄目だよ」
「…でも?」
「好きな子だけにしときなよ」

思わず足が止まった。言葉にするなら、ショックだったのだ。
自分は、やっぱり彼女にとってしたらただの友人だろうか?そう思ったら哀しくなった。
プロになって時間が取れなくなるだろうから、本当にとは繋がりが少なくなって逢えなくなってしまう。パンサーは振られるかもしれないけれど、と思って覚悟を決めた。

は俺と、その、…話題になるのは嫌?」

数歩前を歩いていたの足が止まった。一拍して、こちらを振り向く。
驚いた顔が、自分を見つめた。

「…ほんとにプロになる、その前に言いたかったんだ」
「パン、サー」
「俺は、ゴシップに載っても良いから、とこれからも逢いたい」

アメフトとは違う緊張感を初めて感じた。相手の一挙一動に苦しくなるなんて摩訶不思議だ。
正直怖い。振られたら本当にこれから先逢えないだろう。
自分の顔が赤いのか青いのかパンサーは良く解らなかった。

「…パンサァ」
「う、ん…っ」

が泣き始めたのを見てパンサーは顔色がどっかに飛んでいった。なななな、何で泣くの!?嫌なの!?
心の中ではもの凄い勢いでアタフタしてるのに、身体は全然動かなかった。どうしたら良いのか解らない。え、ど、どうしよう!?

「あ、あの!」
「パンサー、」
「ハイッ!?」

「…今度、プロになって初勝利したら、一番におめでとうって言わせて…?」

目まぐるしく動いていた思考が止まった。けれども脳内では疑問符でいっぱいだ。
どういう意味で受け取って良いのか困った。
自分を、近くで見てくれるのだろうか。

「仲間からは良いけど、おばーちゃんよりも先に言わせて。絶対に試合は見に行くから」
「う、うん…?あの、ええと」
「彼女になるなら、それくらい融通利かせて?」
「…!……!!」

勿論!そう言ってパンサーは笑顔でを抱きしめた。



09/10/04
パンサー可愛いよパンサー。
最終巻、おばーちゃんと一緒に居る絵がとても素敵でした。
もうばーちゃん共々一生幸せで居ろよ!祝ってやるよ!
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