、あの、コレ」
「…どうしたのこれ」
「えーと、うーんと。何だろう、罪滅ぼし?」
「…は」

はパンサーが持っているクッキーの缶を見て、パンサー自身を見た。…クッキーが罪滅ぼし。
それってつまり、どういうことだ。

「…浮気して、申し訳なくなったから物で謝るってこと…?」

え、それパンサー最低じゃない?はそこまで思ったが辛うじて言わなかった。正直自分が言ったことはあまりパンサーの性格を考えると起こり得ないことだったからだ。

「えええええ!?違う違う!してないそんなこと!ありえない!何でそんなこと言うの!?」
「あ、やっぱり?」

思ってた通りだ。しかしそこまで言われると逆に自分がちょっとだけ謝りたくなった。いや、疑ってごめんね。
パンサーの言葉に嬉しくなったのに何も言えなかった。罪滅ぼしのことの方が気になる。

「じゃあ何で罪滅ぼし?」
「うー…俺さあ、プロ契約してから全然と逢えないし」
「プロだからねえ」
「逢うときはの方からばっかりだし」
「おばあちゃん一人にしとくのも怖いしさ。パンサーの出迎えも出来るメリット付き」
「で、…デート、とか。出来ない、し」
「してんじゃん一緒に夕飯の買出しとか」
「………」

どんどんパンサーの背中が小さくなっていった。それが解っていながらは別段黙ることもしない。
あー、可愛いなあと思って笑ってしまった。

「あんまり逢えないし、遊べないしってことで罪滅ぼしにクッキー?」
「…うん」
「気にしなくて良いのに」
「でも、」
「少ない時間でも構ってくれてるのに、これ以上要求できると思うの?」
「…でも俺、流石にアメフトやりすぎって言われた…チームメイトに」
「それ妬みじゃないのー?私は、アメフトしてるパンサーが好き」
「……っ」

黒人は正直顔が赤くなっても解りにくいが、パンサーは反応だけでどうなってるのかが解る。ああ、絶対赤くなってる。
確かに普通の恋人達よりも逢う時間など少ないが、そんなこと解っていたことだ。今プロになって軌道に乗っているパンサーの邪魔もしたくない。
だから、別に今のままで良いのに。

(でも、パンサーがそうやって考えてくれたのは嬉しいな)

赤くなって、縦に長い身体を小さくしてるパンサーの手にまだ有るクッキーの缶を、は自分の手のひらで包んだ。パンサーの、手ごと。
嬉しいから、自然と笑顔になっていたと思う。パンサーと一緒に居ると不機嫌なことの方が少なかった。

「パンサーがそうやって考えて買ってきたんだったら、貰っとく。でも、気にしなくて良いよ。本当に構ってほしいときは、おばあちゃんに愚痴ってるか、パンサー自身に言ってると思うから」
「…、」

その前にクリフォードやバッド辺りに色々漏らして、その段階で色々吐き出して、言ったような所まで行かないような気がする。それで良いような気がした。
はパンサーの手からクッキーの缶を抜き取った。そんなにも悩んだのだったら、これくらいの時間は作ってもらおうと思って。

「ね、一緒にクッキー食べよう?」

こうやってアメフトと同じくらい自分を大事にしてくれるから、普通の恋人同士のような関係じゃなくても構わなかった。
は缶とパンサーの手を取ってリビングに向かった。いつも通り、やっぱり笑顔のままで。



10/09/18
一個前の派生と言うか何と言うか。
パンサーは良い子なので、アメフトばっかりやってると「あ、彼女構ってあげてない!」って気づいてアタフタするんじゃないかと思った産物です。
花束とかアクセサリーとかキザでよく解らないものは買えなかったので、当たり外れの少なそうなクッキー。
最初飴のビンとか考えてたんですけど、何それ子どものホワイトデー?みたいになったのでとりあえずクッキー。
しかもクッキーの缶って言っても平べったいやつじゃなく可愛らしい、こう、立体的なやつです。
何故ここで補足してるんだ自分…。
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