遥昔

地獄に初めて来たとき、思ったことが有る。

「…、まさかこんな場所が有るとはなあ…」

これじゃあ別に死んでも意味ない気がする…、そうは呟いた。
もしもバーダックがフリーザを百万が一の可能性で倒してもフリーザもここ、地獄に来てしまうのなら意味が全く無い。

「うーん、まあそんなこと気にしててもしょうがないか。バーダックの戦闘力で勝てるわけないし」

自分でも酷いことを言っているのは解っていたがこれは客観的な意見だった。力が違いすぎるから勝てるわけが無い。
けれども、勝てないだろうけど、こんな場所が在ると解った今なら関係の無い話しだった。

「つーかアタシが死んでる時点で前線で戦ってたバーダックが死んだの確定よね。どこに居んのかしら」

死ぬ前はこんな場所知らなかった。知らなかったからこそ惑星べジータを必死になって守ろうとまでしたのだ。
その努力というか、行動は無駄かもしれないが、死んだ仲間に会えることが出来るのは中々有り難い。顔はそこそこ怖いが閻魔は良い奴なのかとの頭の中に入った。

少し歩くとはガヤガヤしてる尻尾を付けた集団を見つけた。解りやすいなーと思って近付く。
スカウターを使わなくても直ぐに解る。その集団の中心に居るのは、自分の夫。
生まれてから初めて恋をした相手だ。

「バーダック」

唇が弧を描いてるのに気付くが、直す気は無かった。自他共に認めるほどの笑顔の多さだ。止める気は無かった。
とりあえず、最愛の夫に逢えたことに微笑んだ。振り向いた男は死ぬ前と変わらない。戦いに出た時と変わらない。
自分が愛したままの男だ。





 また逢えるならきみがいい 

最初に地獄に来たときにねえ、そう思ったのよ、バーダック。




08/05/06
群青三メートル手前様から
悠久十題
04. 遥昔 / また逢えるならきみがいい
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