二人並んだ姿を一言で表すなら、

20万打御礼企画

いつものように自分の好きな時間に起きて、バーダックの良いタイミングでリビングに行く。
ラディッツはもう仕事に出ているようで、台所にはしかいなかった。自分から声をかけることはあまりなく、がいつも先に気づいて挨拶をするのが常だった。

「あ、おはよー」
「おー…」
「直ぐ朝ごはん出すから座っててよ」
「おぉ」

どうにも朝起きたばかりは力が入らないからか適当な返事をしながら、バーダックは台所に入って冷蔵庫を開けて牛乳を取り出す。そのまま口を付けるとがうるさいから、最近は口を離して飲むようになった。「コップ使えよ」とにもラディッツにも言われるが、自分で入れるのがとてつもなく面倒くさい。
喉を潤し終えればリビングに行ってテレビを見るのもいつものことだった。
今日はに引き止められたけれども。

「あ、ハイよ、ついでに味見」
「ん」

言われて菜ばしで掴まれた今日の朝食であろうおかずを目の前に出され、条件反射で口に入れる。そのまま普通に租借するとから感想を求められた。

「どうよ」
「もうちょい塩」
「ハイハイ」

率直な自分の意見を述べて、台所を後にした。今日もの作る料理は普通に美味い。腹が減って起きるのが当たり前なので、早く飯が食いたいと思いながらバーダックはリビングの椅子に着いた。


***


3人家族だけれど、食事の消費量はどこぞの大家族よりも多いと自他共に認める程である。何せサイヤ人が3人。消費量が一般家庭よりも多いのはしょうがない。
なのでスーパーに行く回数も多いし、その際に買う量もいつも多かった。

「えーと肉買ったし牛乳買ったし卵とビールはまだあるし、あ、トイレットペーパーか」
「まだ買うのか」
「持てるでしょ」
「そういう問題じゃねーだろ」

っていうか誰が持っていると思っているんだこの女はと毒づくが、口には一応出さなかった。持てないわけでもないし、断じて重いわけではないからだ。しかし毎回買いすぎではないかと思ってしまうのは連れまわされている時間が多いからだろうか。

「食べるの我慢できるんだったらどうにかなるけど」

にそう言われれば、サイヤ人ならば誰でも黙ってしまうのではないだろうか。

「………」
「無理でしょ」
「……おお」

数拍どうにも言い返せずに黙ってしまい、確かにそれは無理だと頷いてしまった。…いや、普通に無理だろう。何で食事を我慢しなければいけないのか。金はあるのに我慢しなければいけない状況なんて意味が解らない。
それなら確かに自分が持ち帰る程度、何ともないわけで。

「はいトイレットペーパー持って」
「…」

だから今日もバーダックはに言われた荷物を静かに運ぶだけだった。それでも多いだろ、と心の中で軽く愚痴を言いながら。
そう思っていたら今度はティッシュの箱まで重ねられたけれど、やっぱりバーダックは何も言えなかった。


***


「ただいまー」
「おー、お帰りー」

ラディッツが家に帰れば、台所からひょっこりと自分の母親が顔を覗かせた。匂いからして夕飯の支度をしているのだろう。
結構どころかかなりヤンチャな母親だけれども、こういうところはそこそこしっかりしている。サイヤ人なのに料理が出来てこうやって地球に馴染んでいる辺りこの母親は凄いとラディッツは密かに思っていたりする。絶対に言わないけれど。

「あ、今日は夕飯食べたらストリートファイトにバダと行くから」
「は、珍しい」

普段は一人で出るだけで、バーダックが出ることなんて稀だった。手加減するのが面倒くさいらしい。曰く「手加減しながら弱いのと戦うのが楽しいんじゃん」とのことだが、の思考が加虐的なのか、ラディッツの思考が地球人寄りになってしまったのかは解らない。
しかしタッグで出るのか個人個人で出るのかは知らないが、今夜のストリートファイトは酷いことになりそうだ。下手をすると元締めに追われるほどに荒らしてくるのがこの二人なので、ラディッツは家まで問題を持ち込まないように祈るばかりである。出場するなとはどうしても言えない。裏のものだろうと汗水垂らして稼いだものだろうと、金がなければ地球で暮らすのが難しいからだ。
しかしまあ、カカロットの仲間が出ない限りは平気だろう。むしろ賠償金でも請求される可能性のが十二分にある。もしくは警察に捕まるとか。絶対にあり得はしないけれど。
ラディッツは若干遠い目をしながら手を洗って着替え終われば、がしている夕食の手伝いを自らやり始めた。手持ち無沙汰だと何とも居心地が悪く感じるのは決して小心者とかヘタレだからとか、そういうことではない。多分。

「まあ勝って帰ってくるから、明日は豪勢な食事期待してなよ」
「おー」


***


「よっしゃー行って来まーす」
「おー」
「ラディッツは本当行かねーのか」
「良いよ俺は」

苦笑しながらラディッツは飛び立った二人の背中を見送る。
自分は一応昼にもきちんとした仕事に就いているから、あんまり派手なことはできなかった。というかブルマにちょっと釘を刺されている。
あと正直この二人がいて勝てるとも思えない。無理だろ普通に。戦う前から逃げているとかそういうことではなく、戦略的撤退とだけ言っておこう。凄く虚しくなるので考えることすら止めた。地球人レベルで言えば弱いわけでもないのに、何でこんなに肩身が狭いのか。辛い。
もう既に小さくなっている二人の姿を見ながら、ラディッツはちょっとだけ思う。

「…まー…本当仲の良い夫婦だよなー…」

正直カカロットのところなんて目じゃない。…これは思っていても本人たちには絶対に言えないが。チチが泣き始めたら悟飯と悟天に何をされるか解ったもんじゃない。普通に死ぬ。
とりあえず風呂入るか、とラディッツは独り言を呟いて家の中に戻っていった。



13/06/27
20万打御礼企画
群青三メートル手前様から君酔二十題
14. 二人並んだ姿を一言で表すなら、
リクくださった岳さんありがとうございました。
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