育てた赤い薔薇

10万打御礼企画

授業が終わって直ぐにシリウスに呼び出された。
裏庭に連れて来られて何事かと思うに、彼はこの日のために用意した物を手渡した。

「これ、やる」
「え」

そう言ってシリウスは赤い赤い薔薇の花束を渡した。腕一杯有るその量は、匂いでくらくらしそうなぐらいだった。
驚いて、花束を持ったままは固まった。

「え、…え?」
「誕生日だから、やる」

黙って受け取っとけ、という威圧感が感じられた。凄く嬉しいが、これほどの量は逆に心配してしまう。

「だって、高くない?花束って…」
「…高くない」
「え、嘘」
「高くない。…育て、た」
「…え」

その言葉に驚いてシリウスの顔をマジマジと見た後、腕の中の花を見る。こんなに綺麗な花たちを、この目の前の彼が育てたと言うのか?もの凄いと思った。自分は夏休みに日本でよくやる朝顔ですら、少し言い難い出来になるというのに…。

「お前が、こういうの、憧れるって言うから…」
「…え?」
「良いから!受け取っとけ!」

そう強く言われては思わず頷いた。嬉しいと言ったら嬉しい。くれると言うのだから貰っておこうと思った。
腕の中の花束を見て、シリウスを見上げた。照れてるのか身体はこちらを向いているのに顔はそっぽを向いていた。ちょっと可愛いと思う。自分よりも随分大きな身体をしているのに仕草は子どもで可愛いな、と感じることが多い。

「うん、解った受け取っとく。ありがとう」
「…おう」

朝から祝いの言葉は沢山貰ったが、これは言葉を貰うよりも嬉しいなあとは思った。胸がホカホカしてくる。
はまた花束を見つめて微笑んだ。それを横目で見たシリウスは、の頬が少しだけ赤いのに気付く。

喜んでもらえて、自分のことを意識してくれれば、良かったとシリウスは思った。
欧米人は日本人に比べて確かにスキンシップ過多で、愛情表現が直接的だけれど、全員が全員そうなわけではない。けれども、は全員がそういうことに慣れているもので、こうやって花束を贈っても欧米の人だからこんな恥ずかしいことも簡単に出来るのだろうと思っている。そういう風に思っているのを知っているシリウスからしたら、ちょっと頬をつねってやりたくなる。どれだけの思いでこの花束を育てて贈ったと思っているのか。解ってるのかそこら辺。
でも、ちょっとでも自分を意識して、嬉しいと思ってくれるなら、今日はそれで満足だと思った。欧米人ならこれが普通、その意識の中に自分を意識してもらえれば、それで良いと思った。道は長いなあと一人溜め息をつく。

「何処に飾ろうかなあ」
「部屋で良いじゃないか」
「うん。じゃあ窓際に飾っとく。枯れてもポプリとかにすれば良いしね」

そこまで大事にしてくれるのかと、シリウスは少しだけビックリした。そうか、枯れてもそういう使い道が有るのかと気付いた。自分が贈ったものがそこまで大事にしてもらえるなら、更に嬉しく感じた。

「今度のシリウスの誕生日、何を送るか今から考えなくちゃね」

そう言われて素っ気なく「別に適当で良い」と言ったが、内心舞い上がりすぎて顔の筋肉を動かさないようにするのが大変だった。
正直面倒くさいと思ったプレゼントを贈る行事も、彼女が意味を理解しなくても、まあこれなら良いかと思った。



***

「何でそこで告白しないのかしらあの犬!」
「全くだよ何で渡すだけなのさ!」
「流石シリウスと言うか…」
「ね、ねえ。覗いてるのバレたら怒られるんじゃ…」

***



09/05/12
2周年+10万打御礼企画でシリウス夢でした。ライ様に捧げます。
学生甘ということで、…あれ、甘く、ない?ヒロイン気付いてませんね。
私の中で「英国人が渡す花=薔薇の花束」な感じの図式なので誕生日で薔薇の花束貰っても
うおー、すげーなー流石としか思わないんじゃないかと。(もの凄いただの偏見です)
シリウスは何処まで行ってもヘタレなのだなと書いてて再認識しました。
企画参加有り難うございました!
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