名前

死ネタ

「シリウス」

一人屋敷に居るは呟いた。小さくてか細い声。それでも何の音もしないこの屋敷では少しだけ響いた。拠点として使っていた時は、とても賑わっていたというのに。ハリー達が夏休み中にこの屋敷に居た時はとても楽しかった。彼もとても楽しそうだった。
今はもう、誰も居ない。
屋敷の主も居ない。誰も、居ないのだ。

「シリウス」

もう一度名前を呟いた。何度呟いたって帰ってこないのは解っているのに、声が勝手に出てしまう。
学生時代、彼の名前の由来が星だということを知ったときも、何て綺麗な名前だろうと思った。今でも客観的に彼の名前を考えるときは、やはり美しいと思う。彼にピッタリな名前だ。夜空に輝く一等星。何て、そのままの名前だろうか。
今また、気付く。彼の名前がとても美しいということに。

「シリウス」

家系図の彼の名前をなぞった。シリウス・ブラック。何て素敵で綺麗で、美しい名前だろうか。
純潔らしからぬ人だった。それでもとても輝いていた。名前の通りの、人。
今はもう、居ない人。

静かには泣いて、また彼の名前を呼んだ。誰よりもその名前が似合った、星の中で一番輝く彼の名前を。





10/04/27
THE BACK HORNの「美しい名前」という曲の一部分が、とてもシリウスだなあと思います。
曲自体は現代ものなので全然関係無いんですが、本当にある一部分だけ「あ、シリウスだ」って思いました。
知れば知るほど彼の名前はとても美しいし、彼に似合ってるなあと思います。
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