絶賛片想い中

朝食の時間が残り少ないのを腕時計で確認しながら、急いでは食堂に向かっていた。
本当はこんなはずじゃなかった。いつもの時間に起きたのに、寝癖のおかげでこんなにも時間ギリギリだ。昨日適当な乾かし方で寝てしまった自分のせいだが、だからってこれはついていない。リリーを待たせるのも申し訳なかったので先に行っててもらったけれど、食堂に一人で向かうのが何と寂しいことか。いつもリリーと一緒に行くから尚更だった。

(あんまり急いで食べるの好きじゃないんだけどなあ…)

嘆いてもしょうがないが、何とも言えない感情が頭を支配する。頑張って食べて、1時間目の授業に遅刻しないようにしなくては。
ようやっと食堂に着いて、ドアを開けてグリフィンドールのテーブルが目に入る。リリーの近くには必ずと言って良いほどジェームズがいるから、結構解りやすい。
絶賛片想い中の相手も、そのジェームズに付き添って近くで食べていたりするので、としては嬉しい限りだった。

「リリー、遅れてごめんね」
「ああ。良かったもしかしたら1時間目間に合わないんじゃないかと思ってたわよ」
「いや流石にそれはできないよ」
「そうね」

微笑という文字が似合うリリーは流石だとは思う。何と言うか、本当に綺麗だ。
近くにいる知り合いにも挨拶していく。ジェームズにリーマス、ピーターに片想い中のシリウス。
…空いている席が、シリウスの隣しかなかった。

「シリウス、隣ごめんね」
「おう」

は迷うのも失礼だと思ってあっさりとシリウスの隣に座る。慣れているわけではないが、それなりに、シリウスとは関わることがあるからこういうことも結構ある。好きな人が学年もクラスも違うとかではないから、もの凄く恵まれている環境な気がする。それでも、こういうときは嬉しい気持ち半分、恥ずかしい気持ち半分。近くにいるのはとても嬉しくて幸せな気分なのに、恥ずかしくて顔はきちんと見られない。隣にいるから余計顔が上げられなかった。目が合うのは気恥ずかしい。
寝癖はきちんと直っているだろうか。これで良いかと妥協して来たので(だって朝ごはん抜きにしたら授業中死んだ魚のような目をするしかない)、は気になって髪の毛に手が延びた。多分大丈夫な気がするけれど、どうだろうか。
とりあえず食べないと本当に1時間目に遅刻してしまうので、飲み物から口に含んで、腹ごしらえをしていった。
トーストを齧っているときに、隣のシリウスの腕が見えた。Yシャツを腕まくりしていて、肘から手までが剥き出しになっていた。男性らしい、筋肉質な綺麗な腕だった。ちょっと生傷があるのは、悪戯のせいだろうか。筋肉だけでなく、シリウスは指も長くて綺麗だ。隣にいるからチラチラ見てしまう。

(こういうの、格好良いなあ、やっぱり)

痩せ型のリーマスや、ちょっとふっくらしているピーターですら、骨格や筋肉は男の人という感じが見てとれる。シリウスは身長もあれば筋肉もある。実はクィディッチ選手なジェームズが一番筋肉質なのだが、シリウスとどっこいどっこいに見えた。
すじだろうか、筋肉がどのように付いているのか綺麗に見える。血管も浮いていて、正に筋肉質な男の人の腕、という感じだった。腕だけでも格好良い。触ってみたいが流石に友人の位置でもそんな勇気は出なかった。むしろどうやってそんなこと頼めば良いのかなんて考えも浮かばない。

「…シリウス、ごめん塩取って」
「ん?ほい」
「ありがとう」
「いーえ」

塩を取るその行為すら格好良い。いや顔も格好良いのだけれど、真隣にいるせいで顔は全然見られなかった。近すぎる。恥ずかしい。
シリウスとの距離が、近い。隣に座るとき、座りやすいようにと隣に詰めてくれたけれど、それ以上離れることがない距離が何となく嬉しかった。片想いの自分はとりあえずシリウスの近くにいれるだけでも幸せだった。話すこともできるし、シリウスを見ていることもできる。

「あ、そうだわ
「何?」
「ジェームズがどうしても、どーしてもって言うから、1時間目はこの人と組むことになったのね」
「ああ、うん。じゃあ誰か他の人とペアを…」
「シリウス余ってるから、シリウスで平気だよ
「おめーのワガママのせいで俺もも振り回してるくせにどうしてそんな言い方になるんだテメーはよう」
「ハッハッハ何だい僕と一緒にいられないからってそんなこと言って。気持ち悪いだけだよ」
「リリーの実験台にされとけ」

ジェームズがリリー大好きだから、こういうことも少なくない。むしろシリウスファンからしたら刺されそうなくらい頻繁にある。ちょっとだけ申し訳ないとも思うが、それよりも優越感なるものが出てくる。純粋にこういうときは、嬉しい。

「あんまり得意な科目じゃないから、よろしくねシリウス」
「お前毎回同じこと言うよな。謙遜しすぎもある意味嫌味だぞ」
「えー…本当のことなのに…」
「おうおうよく言う」

友人という立場なので、こうい軽口も叩ける。遠くから見て「あー格好良い」とため息つくのも楽しいけれど、こうやって隣に座って笑いあえるのも楽しい。何度も思うが、結構、恥ずかしい気持ちも多いのだけれど。
1時間目も隣の席に座れるのだと思うと、の口元は自然に弧を描いた。片想いだからこそ感じる気持ちが、飲み物とは別にの胸を温かくしていた。





11/11/11
片想いは楽しいよね!っていうことが書きたかったはずなんですが…おかしいな…。
筋肉フェチな女の子になった気がしてなりませんが、男の人の腕とかって綺麗ですよね。ついつい見てしまうのはよくあることですよね。ですよね。(必死
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