悪ぃ! 借りてたインク零した!」
「えっ!? 嘘でしょ買ったばっかりだったんだけど!」

インク瓶を部屋に忘れたなんて言うから貸したのに、とんだ仇の返し方すぎる。この間買ったばかりでまだなみなみ入っていたはずなのに、確かにシリウスに返してもらったインク瓶の軽さが尋常じゃない。思わず頭を落とした。

「うわ~半分以上ないじゃん。次の休みホグズミート行くかあ」
「……俺もついてく」
「え?」
「つーか俺が買う」
「えっいいの?」
「俺のせいだからむしろ当たり前だろ」
「やったー」

買い物したら三本の箒にも行こうとシリウスに言われ、二つ返事で了承した。
バタービールも奢ると言われたがそれは恭しく辞退する。流石にそこまでやってもらうことでもない。
それよりも日付的に自分がシリウスに何かあげるべきだろう。

「ゾンコにも行く?」
「は? いや、それは別に……」
「いいの? 誕生日近いでしょう」
「……」
「何か買うよ?」

でもゾンコはジェームズたちと行くほうが楽しいのかもしれない。そう考えたらバタービールを奢るほうがまだ現実的だろうか。
サプライズとかはできないので、シリウスが好きな物を買うほうが気が楽だった。何か欲しいものがあればお金を出せる範囲で買うつもりである。

「……じゃ、あ。当日、一緒に店回ってくれ」
「ん、解った。何にも決まらなかったらバタービールね」
「ああ」

当日晴れるといいね、と言えばシリウスは目を細めながら笑って頷いてくれた。



25/11/03
ホグズミートを一緒に回れることを、自分で用意した誕生日プレゼントだと言えば、彼女はどんな顔をするだろうか。
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