「君と出会えて良かった」

20万打御礼企画

クレイはの目の前で片膝をつく。彼女の左手を優しく取り、自分の口元へと近づけた。口づける場所は、彼女の左手、薬指。

永遠を誓う気は更々ない。自分はやはり戦闘に身を置いているほうが性分に合うし、彼女もそうだった。平穏な日々が嫌いというわけでもないのだが、戦ってるほうが楽しいとも思えるような性格らしい。

その中で死ぬまで傍にいても良い、むしろ傍にいてほしい。そう思った人。隣に立てるのなら立っていたいし、彼女の手を取って歩けるならそうしたい。
最期を看取るのは自分が良い。お互いそう思えた。だから、傍にずっといられるように指輪を贈る。

彼女を独占したいし彼女の傍にいたい。単なる自分のワガママでもあるのだが、それすらも彼女は受け入れてくれた。指輪が通った左手をは右手で握った。

「わたし結婚できないかもとか思ってたから、…幸せ」
「そうなの?おれはここ最近ずっと思ってたんだけど」
「…本当?」
「うん」
「………ありがとう」

跪いたままクレイはの顔を見上げて、微笑む。
彼女も笑っていたから、クレイはゆっくりと立ち上がって自分よりも少し小さなその身体を抱きしめて、の肩口に顔を埋めた。

おれこそありがとう、そう小さく呟いて泣きそうになっているのにそこで気づいた。



13/11/11
20万打御礼企画
群青三メートル手前様から君酔二十題
20. 「君と出会えて良かった」
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