「趙雲」
「劉備殿」

礼をしようとすれば、手だけで構わないと先手を打たれる。
どうにもきちんとした場以外ではこういうのは苦手らしかった。

「………」
「…?劉備殿?」

下から劉備の視線を受け、趙雲は訳が解らず劉備に疑問符を送った。

「いや、そなたは、このまま戦場で死んでしまうのではないかと、思っていたからな」
「は…?私は、劉備殿や蜀のためにこの命、」
「あ、いやそういう意味ではない」
「劉備殿?」

意味が解らなかった。この命も、この武も、全て劉備殿と蜀のために、惜しみなく使うつもりである。
劉備殿と蜀のために散れるなら、戦死で良いと、趙雲は思っている。もっともこんな志半で死ぬつもりは毛頭ないが。

「何と言うかな。そなたは妻も取らず養子も取らずにいるのではないかと思っていたのだ」
「…はい?」
「一人きりで、戦場で散るのではないかと、私は思っていたのだ」
「それは、どういう」

劉備はそこで少しだけ遠い目をして、趙雲とまた視線を合わせた。
あの周囲を和やかにする、独特の笑顔。

「素敵な想い人が、できたのだな趙雲」
「…っ!?」
「いや、良いことだ。私もそうだが、やはり大切な人がいるといないとでは、やる気や底力が違う」
「わ、私はっ」
「先ほどまで話していた女人は、違うのか?」
「っ、」

全てバレてる。
おかしい、ちょっと遠目で会話を見られていただけであろうに、何故自分の想いが漏れているのか。本人にも悟られる気がなかったというのに。
何て御仁だ、と趙雲は改めて冷や汗をかく。

「ほっ、本人や周囲には内密に…っ」
「ははっ、そこまで野暮ではないさ趙雲」
「……」

何だかとても恥ずかしかった。何でだ。
初めてではないけれど、正直こうやって女人を想うのは久しぶりなので、ちょっとだけ勝手が解らず、しかも上司の人間に漏れてしまった。恥ずかしいことこの上ない。しかも自分の焦り方も子どもでもあるまいし、この年でこの対応が自分自身で恥ずかしくなった。

「まあ、そなたがきちんと幸せになってくれるように、私も陰ながら応援しているからな!」
「……精進致します……」

頼むから何か手を回したりはしないでくれと、趙雲は切に願った。
今はまだ、この想いを噛み締めるだけで幸せだったから。



14/11/11
三国無双は3から入ったのですが、まあ普通にこの人に毎回持ってかれますね。イケメンだし誠実で真面目だし。
しかしOPで毎回スタイリッシュアクションすぎんだろwwwwと思ってるのは私だけではないと信じてる。毎回曲芸凄い人です。

この方は正直面倒くさいというのもあって、「自分はまだまだ未熟故」とか言いながらのらりくらりと結婚や養子を躱してそうなイメージがあったりします。
居たらそれはそれで面倒くさいし、自分自身後腐れなく戦場で散りたがってそう。
奥さんとか子どもとか作ると、未練が残るから作らないというか。戦場でどうせ死ぬの解ってるので。
まあこんだけの男がそんなわけあるかって話なんですが、それはそれで。
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