「あ、見て下さい幸村様。どうです?」
「…どうしたんです、その格好」
「贈答品です。刺繍が細やかで、この色も素敵でしょう?久しぶりに女らしくしようかと思いまして。馬子にも衣装だとは思いませんか?」
「…自分で言うことではないと思います」
「そうですか?でも、着られているという感じでも、やはりこういう綺麗なべべを着るのは楽しいものです」
「馬子にも衣装でも、着られているというわけも、ありません」
「またまた、」
「お綺麗にございます」
「…いやいや、」
「いいえ。この幸村、嘘は吐きませぬ」
「またそんなおせじ、」
「世辞でもございませぬ。今の貴方は、お綺麗にございます」
「………ありがとうございます」

そうやって搾り出すのが、その時精一杯だった。
綺麗なべべを着て化粧をするよりも、そうやって言われることが女として産まれて良かったと、思えた。



10/12/25
幸村は素直な天然だと思っております。
別にヘタレでも良いんですが、人を褒めることは簡単にしそうです。
出来ないのは三成。兼継はうるさいけど幸村と一緒で素直に褒められる人。
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