相手はご想像
「…うわっ、
、お前、何それ!?」
「は?」
豪が相変わらず大きな声で叫んだ。うるさいのは本当に小学生の頃から変わっていない。最近は、きちんとした大人になりつつあるのだけれど。それでもやっぱり烈や自分と比べるとうるさい。
指を指されている自分は、豪が何で声を荒げているのかさっぱり解らなかった。
「左手、指輪!結婚したのかよ!?」
「え、ああ。や、これまだエンゲージリング」
ああ、コレのことかと、
は合点がいった。…あれ、っていうか、知らなかったっけ。教えてなかったっけ。もう誰に言って誰に言ってないのか解らなかった。
何でもないことのように
は答えると、豪の声が更に大きくなったような気がした。
「うっわ、マジで!?」
「っていうか、豪知らなかったのかよ」
「は!?烈兄貴知ってたのかよ!」
「この間会ったときも付けてただろ。そのとき聞いたんだよ」
「はああ~~!?」
確かに烈には聞かれて答えた記憶がある。小学生の頃から知り合いで、今でも付き合いのあるこの二人には先に言っておいたほうが良かったのかもしれない。女友達で今も付き合いのある人全員には、話をした気がするのだけれど。誰を式に呼ぼうかと、今話し合っているところだった。
「うわー、マジかー。意外」
「悪かったね意外で」
「意外だけどさー、オメデタイことじゃん!良かったな!」
「…うん」
豪の良いところは、小学生の頃から変わっていないなあと、
はそこで再認識した。声はでかいしうるさいし、考えなしだけれど、それでもこいつは良いやつだ。その兄貴をやってる烈くんは、更に良い人だ。
こうやって知っている人から「おめでとう」と言われるのは、気恥ずかしいけれど嬉しいことだなあと、
は軽く照れて笑った。
結婚式には呼ぶからと、ありがとうと共に付け加えて。
12/12/24
ブレット
「
とブレットは、指輪つけないの?」
「え、…ああ、結婚指輪?」
「そう」
ジョーの発言に
は意表を突かれながらも、言ってる意味が解って返事をする。無意識に左手を持ち上げて薬指を触っていた。
ほんの少し前に夫婦の証の指輪を交換したというのに、自分もブレットも身につけてはいない。お互いに話し合った結果だった。
「うーん、邪魔になっちゃうからさー」
「でも、私服のときくらいは良いんじゃないかしら」
「あー、うーんと、指にはつけないけど、…こうやってネックレスでぶら下げてるのが当たり前になっちゃって…」
ブレットと話し合った結果、指につけていることはできないが、今みたいにネックレスでぶら下げているようになった。服の下からそれを出してジョーに見せる。
そういえば、これを誰かに見せるということはあまりない。話すこともないし、見せることだってそんなにしない。現にジョーが驚いた顔でチェーンに通っているシンプルな指輪を見つめて驚いていた。
「え!?っていうか、ちょっと!ネックレスにしてるならせめて見せるようにつけなさいよ!」
「ええー、でも傷ついたら嫌だし…」
「…ああ、なるほど」
「ブレットが元々こうしてたから、何かノリで」
「…まあ、二人が良いなら良いけど」
12/12/30
左手を飾って、ない!
シュミット
「おいコラ!」
「え、何!?」
「左手!」
「え?」
「指輪だ指輪!」
「は、…あ!ごめん!」
「忘れるか普通!?」
「あんまりつける習慣がないんだってばー!」
「なら普段からつけておけ!」
「家事と仕事するのに邪魔なの!」
「そう言うから譲歩してやってるんだから、畏まった場に行くときに忘れるな!!」
「…ごめん」
「ふん、…全く。貸せ」
13/01/06
ぶつくさ言いながらも、毎回旦那様が左手にはめてくれます。
ミハエル
「た、高いよ!」
「えー、そんなことないよ。寧ろ安いって」
「ちょちょちょ!そんなことなくないよ!」
「お金のことは気にしなくて良いからさー、
の好きなの選んでよ。値札見ちゃ駄目だからね。あとこっちからので選んで」
「なっ、だってこっち側、桁がちがっ…!」
「だからそういうことは気にしなくて良いのー!人生の中で家の次に高い買い物にしたって良いんだから!」
「…!………!!(ややややっぱりセレブな人には付いていけない…!!)」
※結局無事に左手に納まりました。
「……あ、れ…、何か、デザイン違くない…?」
「あ!気づいた?
が良いと思ったやつのに近いデザインで、値段を上げて作り直しててね、」
「!?!?!?」
13/11/11
貧乏人丸出しのヒロイン。
ユーリ
「あれ。指輪、つけ始めたんですか?」
「え、ああ。うん。ちょっとまだ慣れないんだけど、やっぱり結婚したばっかりだしさ」
「へー。邪魔だからってつけてなかったのにですか?」
「うん。…彼女と手を繋いだときにね、指輪の感触があったのが、何か嬉しくてさ」
僕の左手を握ったときに、彼女もそう思ってくれたら良いなあって、思って。
13/11/11
くそ爽やかな顔でそんなゲロ甘なことを言い始めるユーリ。
カルロ
「ん」
「うわっ何よいきなり投げてき、て……え、」
カルロが帰ってきたと思ったら、いきなり小さな四角い箱を投げてきた。
運良くそれをキャッチしながら、いつものように小言を言う。言いながらも、投げてきた物を見つめた。
触りながら見つめて、一拍
の中で間が開いた。これは、よくテレビでも漫画でも見るような、この小さな箱は。
露店とかで剥き出しのまま買った物でもなく、きちんとした店できちんとした箱に収まった、汚れも傷もない綺麗な指輪が、そこにはあった。
自分の中で色々照らし合わせた結果、とりあえず
は噛むくらい挙動不審になった。
「…え!?ちょちょちょ!!投げないでよこんなの!!」
「ああ?これぐらい受け取れるだろ」
「運良くできただけでしょーが!ちょっと信じられない!もう少し雰囲気とか考えなさいよ!あの猫かぶりでも良いから!」
いつもと同じように空気も読まず雰囲気も考えずに渡してきたこの男に怒り心頭で、怒鳴りつけた。ふざけるなよ一応コレでも女なんだからこういうのには結構夢見てるんだから!
そう暴言を吐くけれど、目線はカルロと指輪を行ったり来たりだった。諦めかけてたものだったから、余計だった。
正直に、嬉しいと感じている自分がいる。だって、こんな物、渡してくるような人では、ないから。
それでもやっぱり雰囲気くらいはこう、ある程度作ってほしかったなと、思いながら。
「……………………」
「……(…うん、まあ、無理だろうけどさ。でもやっぱ指輪貰うときくらいもうちょっとこう…)」
「…嵌めさせてもらえるかい、signorina」
「!!!??(シニョリータ!?おおおお嬢さんって呼ばれた!)」
膝を床に付き、カルロは
の左手に口付けながら、そう言った。
初対面のときにすら言われたことのない言葉を、今始めて言われて
は指輪を投げられたとき以上に動揺した。
え、本当にあの猫かぶりで渡してくれるのだろうか。
パニックになっていると、勝手にカルロが指輪を取り、戸惑うこともなくそれをはめた。
そんな馬鹿なあのカルロが。リオーネやジュリオに何を吹き込まれたのだ。
左手を取られたまま、
は口は開けど何も言葉が出てこなかった。何も、本当に何も言葉が出てこないのである。
嬉しすぎて。
「…ハッ、赤くなりすぎだろ」
「だだだだだって、ず、ずるっ、何でそんな、……っう~~」
嬉しくて、恥ずかしくて、でもこうやって本当に大切なときには大事にしてくれるカルロが、格好良すぎて、
は気づいたら涙目になっていた。
顔が赤いとからかわれたことなんて、この際どうでも良いし些細なことだった。今、この瞬間が幸せすぎてどうしようもない。
「…泣くのはベッドの上だけにしとけ」
「うっさい、変態っ、ぅ、…っほんと、にっ、これ、くれるの?」
「ちゃんと、渡しただろ」
ぶっきら棒だけれど、カルロはさっきから跪いて
の左手をずっと離さなかった。目線はずっと
を見続けて、彼の手には自分の左手が収まっている。綺麗なシルバーリングがはめられた、自分の左手はずっとカルロの手に引かれたまま、しかもさっきから何度も唇が手の甲に当たる。いや当てられていると言うか。
クラクラしそうだった。いや実際問題、酸欠でクラクラしているかもしれない。息がし辛いのは、絶対目の前のカルロのせいだった。
格好良すぎて意味が解らなかった。ああでも、それ以上に今は幸せで嬉しかった。
「返事は?」
「…、………」
催促されてうっかり答えそうになったけれど、
は思いとどまった。意外と冷静な部分は残っているようである。
どうせなら、最後までこの格好良い人から聞きたいと、思ってしまった。
「指輪渡すだけじゃなくて、ちゃんと、言ってよカルロ…」
「……」
また何か言われるかと思ったけれど、予想とは違ってカルロは少し考えてるように見えた。その間も、左手は捕まれたままだったのだけれど。
左手の先から見える、カルロの目線が死ぬほど格好良いと思いながらも
は必死に耐えていた。正直恥ずかしくて足は震えている。
「…そこまで俺に言わせたら、逃げられねーからな。覚悟あるんだろうな」
カルロの吐息が手に当たるが、それすら気にならないことを言われた。
そんなことを、今更。
は一瞬だけ驚いた顔をして、直ぐに何故だか笑ってしまった。とても嬉しそうに、頬を染めながらカルロの顔を見て微笑んでいた。
のその顔を見て、カルロも笑った。
に気づかれないように彼女の左手を口元に引き寄せて隠しながら。
その直ぐ後に、いつものような挑戦的な顔で、彼は彼女の望む言葉を言うために口を開いた。
「お前の答え一つしかないが、良いかよく聞けよ、
」
お題「LUCY28」様