「ごめん、先に謝っておく」
「え、何が?」
「多分、君を困らせるから」
「…なあに?」
「ごめん、好きなんだ」
「へ」
「君が好きなんだ」

数秒どうしたら良いのか解らなくなって、止まってしまった。
言われたことを反芻して、理解していく。
瞬間、頭の中が真っ白から真っ赤になった気がした。

「え、ちょ、ま、」
「だから、ごめん」
「いや、あの…ごめ、ちょっと待って…」
「ああ」

いやいやいや、おかしい。何だろうコレ。
あれ、これ謝られることなんだっけ?

「…ええと、何だろう。うーんと。…先に疑問を解決させて。何で謝るの?」
「え、いやだから君を困らせるから、と」
「…何でそう思うの?」
「いや、だって…」

そこまで言って、今度はユーリが考えた。気付いたかもしれない。
そりゃ、知らない人やどうでも良い人からそんなこと言われたら、困るけれど。
少し驚いた顔をして、今度はユーリが赤くなった。

「…、あ、…ええと、」
「……」
「い、や…あの。こんなこと言えば、が困ると思ったから…」
「うん」
「だから、謝ったんだけれど…」
「…うん、私は、嬉しかった」
「う、あ、ええと…」

ユーリの手が頭に行ったり口に行ったりしていた。真っ赤になってる顔は、いつもは見れないレア物だろう。

「嬉しかった。だから、謝らなくて良いから、…ちゃんと言ってほしい」

また驚いたのが顔を見ていて解った。いつも冷静沈着と言われるような彼だから、結構意外だ。
もしかしたら誰も居ないせいだろうか。彼は、誰か慕ってる人が居るとその成果を発揮するタイプのように思える。
暫く赤くなりながらも、迷っているように見えた。ほんの少しして、彷徨わせていた視線をこちらに向けた。

「…好きだ。君が、好きだよ」

さっきから我慢していた涙が溢れるかと、思った。



09/08/16
ユーリは先に謝りそうだと思った妄想から生まれたものです。
自分なんかが貴方のことを好きでごめんなさい。
それと告白して困らせるだろうから、ごめんなさい。
そんな感じで先に謝るような子だろうなあと思いました。