欲情対象

自分の前でだけで見せる顔が、堪らなく愛おしい。



そう燕青はの顔を見ていて思う。愛しくて愛しくて、その気持ちが空回りするくらい愛しくて。
誰かを好きになると景色が色付いて見えると言うのは本当なのだと身を持って知るなんて思いもよらなかった。本当に色付いた。今までの生活の色は何だったのかという話だ。逆にが居なくなった時はどんな色になるのかと恐怖を抱く。そんな絶望は欲しくないなーと少し軽く考えた。

「燕青?」
「ん?」
「どうかしたのか?」

ボーっとしてたぞ、とからかうような心配するような口調でが言う。ああ、可愛い。
そうやっていつもと違う彼女が見れるのが嬉しい。幸せだ。他の野郎がこの違いを知らないなんて不幸だと思うし優越感も抱く。こうやって自分に見せる顔は他の奴に見せなければそれで良いと、思う。
いつもはあまり人前で笑わない彼女。いつもは人前で泣かない彼女。人前では顔を赤らめることも、崩すこともあまりしない。不意を突かれた時だけ、少しだけ表情は変わるかもしれない。それを知っている人間は数少なく、その数少ない内の一人が自分なのが、とても嬉しい。誇らしいとも言えるのかもしれない。とりあえず、燕青はの中で他の男よりも上の位置に居るのだろうと思うと表情が崩れてしょうがなかった。

(というか、他で見れない分余計ムラムラすると言うか…)

男の性って辛いなあと思う。分別弁えようと思えば出来るが込み上げてくるものはしょうがない。理性でどうにかなるにしても場所も時間も関係無く込み上げてくるので正直押さえるのも面倒くさかった。仕事が無く、屋敷に一緒に居る状態だったら多分何も考えずに突っ走るのだろうと簡単に予想が出来た。理性とか何だそれ、という勢いで。多分そんなことになったらなったでその後は口もきいてもらえないのだろうが。こちらも簡単に予想が出来て泣けてきた。

まー、とりあえず目の前の彼女は可愛いなあと思う燕青だった。

(あームラムラする。本当可愛い)



08/11/23
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