高く澄んだ淡い空

昊が綺麗だ。
こういう昊を見ていると、何だか色々どうでも良くなってくるから不思議だ。大自然が偉大なのか。自分が小さいからなのか。
昊のように大きな人間なら、一人だけ知っているが、アイツはこんな淡い昊が似合う男でもない。は微笑んでいるのに気付かなかった。
後ろから、思い出していた男の声が聞こえる。

、お前なー書き置きして出かけるのも良いけど何だってこんな原っぱに一人で来てるんだよ」
「…街中では色々邪魔だったからな」
「何が?」
「建物とか、壁とか」
「……ああ、昊見てた?」
「あとのんびりしてた。お前が来たせいで台無しぶち壊しだ」
「ひっで」

それでも彼女が笑っているから、燕青はの隣りに立った。
もう随分温かくなってきた。この間までは昼と夜の気温差が激しかったのに、最近は夜も少し暑い。夏は直ぐそこだった。
夏になれば、高く青い昊が見れるようになる。この男の季節だろう。は、燕青というのはどこまで行っても暑苦しい男だなあと一人思う。それでこそ燕青なのだろうけど。静蘭と本当に真逆の男だ。何もかもが違いすぎて逆に色々合うところが有るのだろう。
どうでも良いことを考えてるを他所に、燕青はそよいでいる風が気持ちよくて目を閉じた。

「今日は風も気持ち良いな」
「ああ」
「でもあんまり身体冷やすなよー」
「解ってる。…お前、最近口うるさくなったな」
「あのなー…」
「まさかお前にこう言われる日が来ようとは…」
「意外とズボラなが悪いんだろうが」
「だから、それをお前に言われるのが心外なんだ。悠舜様に知れたら何と言われるか…」
「いー加減にしねーと俺も怒るぜ?」
「してみろ、私の今の状況でできればだがな」
「………」

黙るしかなかった。心配していた本人としては、確かに何もできない。彼女の身体には今あまり負担はかけられない。
燕青は溜め息をついた。この嫁は結婚して子どもができてもこのままだ。亭主関白という言葉はいつまで経っても見ることができないのだろうと悟った。…凄く不甲斐ない気がする。別に大きい顔をしたいわけではないが、尻にひかれるのも男としてこう、どうなのとは思う。
今の現状にちょっと満足してる時点で駄目か。そう燕青はいつも結論付ける。駄目ダメだ。

「…まだ居るか?」
「……そうだな。燕青が来たから、まだ居るか」

どういう意味だ。燕青はわけが解らず瞬きした。
は昊を見上げたまま笑っているばかりだ。燕青が来なければそろそろ帰るつもりだったが、来たなら一緒に、このまま暫く居るほうが良い気がする。だからはそのまま動かず視線を上にしていた。

昊が、綺麗だ。
燕青に似合うような昊はまだ先だろうが、これから来る季節のことを考えて、二人でそれを迎えることができることが堪らなく幸せだった。



10/09/04
君を想う5つの情景
03 高く澄んだ淡い空
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