「私の愛は重いよ?」

返事はそれだった。
赤い薔薇を渡した。アフロディーテが丹精した、選別に選別を重ねた綺麗な赤い薔薇だった。正直女神に請われてもこんな薔薇作らない。何かの世界大会とかあったら出場して優勝掻っ攫うくらいもできると自負している。それくらい力を入れて作った薔薇だった。もちろん毒なんてない。
彼女を想って作った薔薇だった。女性と関係を持ったことはあっても続けたいと思ったこともなければ、そもそも関係を維持するなんて考えたこともなかった。それは自分の立場的にも無理だと解っていたし、どうせ戦場で死ぬのも解っていたからだ。それならば後腐れないほうが自分も相手も良いだろうと現実的に考えた結果だった。
ただ今は事情が変わり、戦場で死んだは死んだけれども生き返ってしまった。女神に感謝するべきなのだがしばらくは呆然と過ごしていた。まさか生き返るとは思っていなかったので正直居心地が悪い。何せサガを筆頭に色々自分たちはやらかしたからだ。
まあそれをいつまでも考え込んで生きていくつもりもないので、ならば仕事はきちんと行おうと以前よりもちょっぴり仕事の量は増やした。サガのように終わらないのではないかという量までは抱える気もないけれど。

新しい人生を歩み始めて、最初にシュラが大事な人を作った。というかそもそも相思相愛だったらしい。アホらしいとデスマスクは大きな溜め息を吐いていたが口元は笑っていた。シュラに渡すのは笑えてくるのだがこのときもアフロディーテは薔薇を育てて渡した。
デスマスクは夜な夜な女性を変えては渡り歩いていたが、結局自宮の女官のもとに落ち着いた。女官をやらせていたら男ができない可哀想なアイツに優しい俺様が云々などと言っていたがどう見ても惚れこんでるのはデスマスクの方だった。何せ女遊びを止めている。この時はまだ蕾の薔薇を贈った。二人で育てていってほしいとは言わなかったが、デスマスクは気づいたようだった。
まさか最後が自分だとはアフロディーテは思いもしなかった。まあリアリストはリアリストなのでしょうがないのだけれど。相手が居なかったというのもある。できてしまえば行動するだけだった。
リアリストな自分も入れ込んでしまった相手。手ごわいだろうなあと思いつつも、会話の端から手ごたえがないわけではなかった。悪くはないが確証もない。ならば解るように行動するだけだろう。自分ができるのはこれくらいしか知らないから、ならばそのできることを最大限生かして想いを伝えようとした。まあそのために大分月日を使ったのだけれど。
赤い赤い薔薇を、彼女へと贈る。想っていると、気持ちも伝えて。
返事はただ一言、YESでもNOでもなくその一言だった。いやこれはYESなのだろうけれど。アフロディーテはの言葉を咀嚼して笑ってしまった。

「うん、上等だ。黄金の私に対しては、それくらいの方が良いだろう」
「…後悔しても、知らないよ」
「ああ。君もね。私の愛は見ての通り重いよ?」

赤い薔薇をの胸元に寄せて、受け取るように目配せする。これは正直自分でも重いとは思うのだが、これ以外に自分らしさを見せながら告白する手段を思い浮かばなかった。多分結婚を申し込むにしてもこうなる気がするが、それはしょうがない。
は三拍ほど薔薇を見つめた後、おずおずとだが手に取ってくれた。ありがとう、と付け加えては控えめに笑った。



14/10/16
彼女と自宮に帰る道が何と煌びやかなことか。
お題:Amaranth(アマランス)様から「あたしの愛は重いよ?」
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