「ハッピーハロウィンでーす!」
「………は?」
「ハッピーハロウィン!!お菓子どうぞラダマンティス様」

何を言っているんだこの女は。そういう顔を繋がり眉毛の上司はした。大変失礼である。自分が不躾であるのはさておき。

「ハロウィンがどんなイベントだか知らんのか」
「知ってますよー。お化けの格好してお菓子を貰いに行くんです」
「……」

今度ははあーと大きなため息を吐いた。眉間のシワが無くならないのはこの上司大丈夫だろうか。自分が眉間のシワを増やしていることについては何も考えてはいない。

「…本来は子どものためのイベントだ。しかもお前が言ってどうする。更に一番大事な日にちを間違えてるのはどういうことだ。目と頭は大丈夫か」
「わーお辛辣」
「仕事をしろ」
「終わりましたよ知ってるでしょうに」

本当に仕事人間である。まあ確かに山のように仕事があるのも知っているが、それはそれでこれはこれである。今日の仕事は終わらせたし、もう帰る時間である。自分の仕事は終わらして遊んでいるのだ。文句を言われる筋合いはないと胸を張れる。
まあ仕事場で遊ぶなという話だろうが。

「ハロウィン本番の31日はお休みだったので、先にと思って」

はいどうぞー。小ぶりな包みを無理やり押し付けた。渡せれば満足なのである。そう、今日この日に、この人に渡せれば、満足なのだ。

「まあ自己満足なので食べても食べなくても大丈夫です。一応ちゃんと買ったものなので味は保証できますよ」

ちゃんと自分で買って美味しいと思った物を選んだ。この人の舌に合うかはともかく、そこそこの値段で有名なところのである。ハロウィンにかこつけてそれっぽい包装やら中身だが個人的に渡せれば満足なので後は野となれ山となれだ。

「…お返しなんぞ今持ってないぞ」
「良いですよ、個人的に贈りたかっただけなので」

そんな返答をしたら少しだけ苦い顔をされた。律儀だなあと思う。貴方のお給料からすれば雀の涙のようなものなので平気ですよとは思ったけれど流石にプライド的に言えなかった。

「ちゃんと選んだものなので食べてもらえればそれで良いですよ。ではでは、残り少ないですが素敵な一日をお過ごしください。…誕生日なんだからもう帰ってくださいよ」

驚いた顔をした上司を置いて、部屋を後にする。
…来年はもっとちゃんと祝ってあげたいなあと、歩きながら思った。



17/11/11
誕生日間に合いませんでしたが!!おめでとうございました!
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