女神は全て許している

03

彼女は自分にとって素敵な女性だと思っている。
ただそれが、他の人にも当てはまるのだと思って少しだけ悲しいような寂しいような気持ちになった。

「…?そうだな、素敵な、いや違うな。魅力的な、女性だと思う」

アイオロスですらそう言うのだから、彼女は本当に素敵なのだろうと何故か自分が誇らしくなる。
何故聞いてしまったのかは解らないが、聞いてみたかったというか自分の中で何かの決着をつけたかったのかもしれない。ああでも、絶望するしかないというこの状況は中々に辛い。
彼女とアイオロスはお似合いだなと、思ってしまったのがまずいけなかったように思う。ただ、ただその考えが頭を占めて、彼女とアイオロスが付き合うのならばそれは素敵なカップルになりそうだと自分自身で思ったのもいけない。どこまでも悲観的になるこの脳にはほとほと困り果てていた。それでも彼女が選んだ相手がアイオロスならばと納得もできる。アイオロスが、彼女を選んだというのも当然のようにも思ってしまう。

彼女のことを話すアイオロスの顔は、直視できなかった。怖くて、見れなかった。どんな顔をして彼女のことを話すのかなんて、目に焼き付けたところで余計辛くなるだけだろう。
アイオロスならば彼女を幸せにできるのだろう。自分でそれができるかと聞かれれば無理だと直ぐ様頭を振る他ない。何せ私は、生きているときだけでなく死して尚も罪を重ねた。それでも許した女神は偉大すぎて頭も上がらないし、それが本当に良かったのかも私自身は解らない。ただ年齢的なものと、偽者とは言え教皇という立場に就いていたというだけで今のこの地位だ。罪を裁かれることがないのならば、自分に任されたこの仕事を誰よりもこなすしかなかった。それでも罪滅ぼしになるはずもなく、だがこの与えられた仕事をこなす以外の選択肢も見つからない。

ただ、自分が幸せになることはいけないことのように思えた。

誰かを好きになるなんてもっての外だし、それに現を抜かしている暇もない。この想いを彼女本人に言うこともなければ誰かに打ち明けることもないのだろう。
彼女を好ましいと思ってから、そんなことを考えてばかりいる自分にほとほと嫌気が差した。



14/04/27
Page Top