女神は全て許している

05

それから。

「何で進展してないんだ」
「…一応してる」
「どこがだ」

関係的には確かにアイオロスの言う通り以前と変わっていないのだが、個人的には凄く進んでいると勝手に思っている。

「夕食に一緒に行く程度なら私でもできるぞサガ」
「!?行ったのか!」
「いや例えばの話だ。でも多分誘えば彼女なら乗ってくるだろうな」
「………」

それは確実に彼女が銀聖闘士で私たちが黄金聖闘士だからではないだろうか。

「さっさと言ってしまえば良いものを」
「……まだ時機じゃ、ない」
「いつになったら来るんだその時機とやらは」

盛大なため息を吐かれ、何故だか肩身が狭くなる。…自分のペースというものがあるんだからそう急かさないでもらいたい。

「まあ進展させようと動き始めたのは良い傾向だと思うけども」

そのことについてはアイオロスとの会話がなかったら確実に後退していただろうと思うと、何も言えなかった。あの甘ったるいコーヒーを無理矢理飲んだのもチャラにできる。
今日もアイオロスはあの甘すぎるコーヒーを飲んでいた。

「彼女も今は仕事が忙しい。…もう少ししたら落ち着くし、その時にまた打ち上げで夕食に誘ってる」
「へえ。じゃあ私も仕事頑張らねばな」

私の仕事が押せば君らにも負担がかかるからなーと、笑いながら自分の机にアイオロスは戻っていった。書類関係は意外と適当だが、期日を破ったことはないのにそんなことを言うアイオロスに思わず笑みが零れた。まさかこの分野で彼に助けられるとは思ってもみなかった。同時に、正直な話ライバルにならなくて良かったと心の奥底から本気で安堵した。
そこで執務室のドアがノックされる。小宇宙で誰かが直ぐ解り、少なからず心が踊った。

「どうぞ」
「失礼します。早速なんですけどこれ期日が早い書類と、こっちがこの間言っていた資料です。足りなければまた言ってください」
「ああ」

仕事中はお互い公私を分けているから仕事の話くらいしかしない。それで良いと思っている。今の忙しい期間を終えて、打ち上げと称して二人で夕食に行くのが逆に楽しみになってくる。
仕事に関する話が終われば、彼女は別のことを聞いてきた。

「コーヒー、おかわり淹れましょうか」
「ああ、すまない頼む」

出されたコーヒーは、いつも通り私の一番好みの味だった。
そのうち彼女の好みのコーヒーを私が淹れられるようになるのだが、それはまた随分先の話。



14/07/05
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