「ふ、不束者だが…」
「ぶはっ」

まさかの言葉を相手から言われては思わず吹き出した。まさか男性の、しかもこの造形も良いスタイルも良い、仕事もできる人から言われるとは思わず完全に不意打ちだった。
こんな、晴れの日にこんな風に笑わされるとは。

「なん、で…そこで笑うんだ」
「笑いますよ、それ、私の台詞です」
「そうか?」
「そうです」

白を基調とした部屋で向かい合って話す。日の光が入ってきてだいぶ部屋の中は明るかった。何と言うか、幸せいっぱいの視界だ。
自分がこんな、憧れとも言える衣装を着ているのは中々意外としか言いようがない。恥ずかしい気持ちも大きいが、この衣装を着れた満足感も大きい。お互いが好みやら何やら吟味したものなのと、何度も試着をしてオーダーメイドしたものだから合っていないということも、多分ない。
この人の隣に、この姿で立てるのは凄く幸せなことで、…正直ありえないことだと思っていたから、ただ普通に今は嬉しかった。不安がないわけでもないが、それでもやっぱり、この日を迎えられて幸せだと思えた。
早く始まれば良いのにとも思うが、始まってしまったらあっという間だろうから、このまま二人でずっと居たい気もする。何せ目の前の大切な人も、とても素敵な格好でいるから。

「言い忘れていたんだが、」
「はい?」
「…その、とても似合っている」

綺麗だと、続けられてちょっぴり泣きそうになった。化粧が崩れるから、泣かないように頑張る。
そこで外から呼ばれて、「行くか」と言いながらサガさんにベールを下ろしてもらった。



19/11/11
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