42.数日後


「え、良かったの?」
「はい、先輩のお陰です」
「いやいやいや」

百人一首のレポートは色々ありはしたが無事に完成し、戻ってきた点数は上出来以上のものだった。
昼休み、いつものように図書室に来て先輩に話しかけて、お礼を言う。ある意味国語の先生が恋のキューピットと言っても良いくらいだった。課題がなかったらこんな風には、多分ならなかった。
お礼を言いに来たはずなのに、逆に鷹はに褒められた。

「私資料提供しただけだし、点数良かったのは本庄君の書き方が上手かったんだよ」

見せてもらったの凄いまとめ方上手かったもん。
そう言われて鷹は照れ笑いを浮かべた。そう言われると確かに先輩は資料しか提供していないかもしれないが、それでも手伝ってくれたことには変わりないのだ。しかしそうやって褒められるのは嬉しいし、課題で高得点を取れるのも達成感があった。

「…あ、そうだ」
「?」
「ね、お礼っていうか、その、時間があったら今度私にアメフトのルール教えてほしいな」

驚きで、少しだけ返事が遅れた。まさか、そう言われるとは思ってなかったから。

「アメフトルール、ですか?」
「うん、時間があるときで良いんだ。少しは自分で本を見たりもするけど…ええと、本庄君に、教わりたい、です」
「………」

何かまた可愛いこと言い始めたこの人。
鷹はいつものような表情を浮かべながら、心の中は挙動不審の如く色々思考が飛んでいた。
可愛いこと言ってるし今日も可愛いしアメフト知りたいって、それはつまり自分のため?自分のことを知りたいとか、そういうことだろうか。自分がサッカー部とかだったらサッカー教えてほしいとか言われるのだろうか。オフサイドがよく解らないから教えてほしいとか言われたら、別にサッカー部でなくても喜んで教えるのに。
自分に対して、アメフトのことを教えてほしいと言ってくれた。自分に対して関心があって、自分の関わっていることに関心があるということだろう。今のこの仲だし。
好きな人が自分に興味関心を持ってくれるのは、とても嬉しいしどうにも気分が高揚する。人から関心を持たれるって、こんなにも嬉しいとか幸せとか、自分の存在価値を認識できることなのかと、今更ながらに気づいた。それも先輩が教えてくれたことだった。

「あの、ちょっと面倒くさいルールですけど、それでも良ければ、」
「!…うんっ。良い、大丈夫、覚える!頑張って覚えるよ!」
「……」

あれ、ちょっと、あの、何だろうこの可愛い先輩。先輩は先輩としてというか、年上として尊敬とか敬愛していた部分があったけれど、何か本当最近妙に可愛いのだけれど。何か手がプルプルしてきた。可愛い。

「とりあえず今日はルールブック見ながら部活終わるまで待ってるね!」
「………っ」

そこまで言われて、鷹は先輩の顔を直視できなかった。
また信じられないくらい顔が赤くなったのは、言うまでもなく。