41.直後


「…あの、でも、彼氏とか、いないんですか?」
「は、えっ!?何、え、何で!?」
「…前、一緒に歩いている男の人を見ました。学校で。他校の人と」
「ええ!?……え、あ、ちょ、ソレって目つきも柄も悪いヤンキーみたいな?豊玉高校の制服着てた?カリメロみたいな髪型の?」
「あ、…はい。多分その人です」
「ない!!ないないない!!絶対!ない!!止めて!ただの幼馴染なだけだから!」
「幼馴染…」
「そう!!っていうか、やだ、あれ見られてたの!?うわああ…!」

「本庄君だけには見られたくなかったのに!」と頭を抱えながらそう叫んだ先輩が可愛らしくて、何だかその幼馴染のことはどうでも良くなってしまった鷹だった。


***


「じゃあ、あの、また明日、ね」
「はい…また、明日」

そうやってその日は先輩と分かれた。図書館での出来事から一緒に帰って、そこまで口数多く話すことはなかった。
今まで聞かなかったことを、ここぞとばかりに聞こうと思っていたのに、でも結局気恥ずかしいからかあんまり口を開くことはなかった。
それでもクラスのこととか、自分のクラスやアメフトのこととか、今何を読んでるだとか、後からよく思い返せばそこそこ話すことはできたようにも思えた。一緒に帰れるだけでも嬉しいからか、いつも以上に口下手になっていた自覚はあったけれども。

「…あ、」

帰ってる途中、父親からのメールが届いていて、気づく。

(…メアドとか、聞いてない…)

明日また、聞きたいことが増えてしまった。


***


「っ…、そうだメアド知らないんだった…!」

今まで何度も聞きたいと思っていながら、スマートな聞き方が解らないからと後回しにしていたことで、今正に後悔している最中だった。
何てことだ今日この日にメールも電話もできないだなんて。携帯を握り締めるの手は思わず震える。

「うあああメールとか…したかったのに…!」

巷で噂のおやすみメールとかできたら凄い最高だったのに、何てことだ。はそうやって頭を抱えた。
話す以上に本庄君はメールでの文面は簡潔で素っ気ないことになりそうだが、それでもできるだけまだマシだろうと思う。しかし今この状態ではそれすらもできない。
明日はまた図書室来るの?とか、待ってるから一緒に帰れたら帰ろうとか、そういう憧れのやり取りが、できない。

「明日…!明日絶対聞こう!」

今日という日にメールも何もできないことに頭を抱えて、は明日の目標を掲げた。



「しかも何で烈ちゃんからメール来るのさ!」

『マルクス・アウレリウス・アントニヌスって誰で何したん』

「知ってても教えるか!つーか今この時期にそこか!」