その瞳は誰を追うⅠ


結局、アイツはタタラしか見てないんだ。
最近そればかりを考えている。嫌なことだ。揚羽は、自分を見てくれないのだろうか。

あの男は話してくれないことばかりだ。
この間も自分は蜘蛛のようだと言われた。今はまだ解らなくて良いなどと、訳が解らなかった。貶されているとしか思えない。殴ろうか蹴ろうか本気で悩んだが勝てないから断念した。悔しくてしょうがない。
好いているからこそ、こうやって悔しくなったり気になったりするのだ。何でこんなにも全力であの男を想ってしまうのか。
こんな、自分を見てくれないような、…タタラの更紗しか見てないような、こんな男を、何で自分は好いているのだろうか。

ちょっとだけ、泣きたくなった。