抗えない本音Ⅱ


そんなの、決まりきってる。

茶々に言われた一言、のことをどう想っているか。そんなこと、もう答える必要もない。

いつからこの気持ちができたのかすら覚えていない。ただ、アイツに惚れて悔しかった覚えはあった。多分、悔しいと思ったから自覚したはずだ。好いてしまった。蝶の名を持つ自分が、風のように動く自分が、こんなにも入れ込んでしまった女ができたのだ。悔しくないはずがない。
それでも、が笑った顔を見たくてしょうがなかった。自分よりも彼女が笑っていれば良かった。幸せになってくれれば、良かった。
自分では幸せにすることはできないのが解っていたから、そう、彼女だけでも笑ってくれれば、それで良かったのに。

勝手に近づいて、抱きしめて、想い合って。
それなのに、突き放したのは自分だった。だって、好きな女とどうやって生きていけば良いのか、どうやって触れ合えば良いのかなんて、解らなかった。
どうせ一緒にずっと居られない。だから、蔑ろにしていた。
それでも離れていかないが愛しかった。変わらぬ視線を送ってくれる彼女を見て、自分が愛されていることを実感できた。そんな、最低なことを感じていた。が距離を縮めたいと、そう思って接してくる顔を見て、まだ暫くは一緒に居られると勝手に思っていた。
やっぱり自分は汚くて汚くて、を汚すしかない存在だった。
汚すのが嫌でしょうがなかったのに、今のこの状況も凄い嫌なのに、それでも、彼女が染まってくれるのはちょっとだけ幸せだった。彼女の記憶に少しでも留まることができれば、もしかしたらどんなに最低で嫌な男になっても良いのかもしれない。誰よりも何よりも後悔して、自分自身のことを憎んで、それでも彼女の記憶に残れたらそれは幸せなのだろうと、今から思っていた。歴史の表舞台に立つこともないし彼女の中で良い記憶として残らなくても、彼女がどんな形でも自分を覚えていてくれるなら、それはまだ幸せだと思った。

気づいたら視界がぼやけていた。一瞬アロのことを思い出して、余計見えなくなった。
ああ、自分は本当に女運がない。
でも今回は自分自身のせいだ。自分が、のことを拒絶した。にあんな顔をさせてしまった。追いかけなかったし、今もまだ何も言ってない。
正直な話、彼女のことを思えばこのままで良いと思っている。そう、このまま最低な男として居続ければ、良いと。

悔しかった。

惚れて悔しいと思った。自分がこんなにも彼女を好いたのが悔しかった。
それ以上に、自分が触れないのが、幸せにできないのが、堪らなく悔しかった。幸せにできるならしてやりたい。抱きしめて、触れ合って、愛し合えるならどれだけ幸せか。どれだけそれで、自分が救われるか。
そんなことしたら、を最終的に泣かせることになるって解ってるのに、それでも夢や希望は募る。
彼女を愛せたらどれだけ満足か。彼女に愛されたらどれだけ幸せか。

いつもいつも、一人で居るとそんなごちゃごちゃしたことを考える。考えたって考えたって、どうせ答えは決まっているのに。

どうせ、を好きなことには、変わりがないのに。

泣くほど愛しいと思ってる。頭の芯から好きだと叫んでいる。
どれだけこれからのことを考えて、どれだけ冷静に客観的に考えても、やっぱりそれでも、自分はが好きだった。

どんなことになっても、どう思われても、それでも愛し合いたいと思ったのは、だった。