愛してほしいと、思ってしまった。
ねえ、やっぱり目を見て、顔を見て、自分を見ながら、名前を呼んでほしい。あのときのように、抱きしめてほしい。
ずっと一緒に居てほしいなんて、言わない。でもせめて、せめて少しくらいは、愛してほしい。
タタラに向ける愛情をほんの少しでも良いから、向けてほしい。そうしたら。
「菊花」
「…揚羽」
そうしたら、ねえ揚羽。
「…話が、ある」
愛されてる間だけでも、笑っていられるから。
今の自分は誰の前に出ても、笑顔を作れている自信が、なかった。
菊花は揚羽の使っている部屋に通された。
揚羽の背を見ながら歩いている間、菊花は既に泣きそうだった。ああ、こんなにも近いのに遠い。前よりも遠くなった気がした。
好きなのに、こんなにも離れていると、思うなんて。