06-1


盆休みが終わってまた日常に戻った。
日常が始まればあっという間で、気づいたら秋が過ぎて冬である。その間に一人がそこそこの頻度で治療院にやってきていた。

「そんな疲れてるの……?」
「ああ、そんなところだ」
「何それどんなところよ」
「首が辛い」
「いやまあガチガチだけど」

それでも以前よりはだいぶ状態がいい。むしろ状態が良くなった分、悪くなったときに解るようになってきたというところだろうか。
いやそうではなく、月に二度以上来る時があるのは流石に街に来すぎじゃないかと心配になる。
まあ来てくれるのなら売上になるので助かるのだが。
施術が終われば一人が夏前と同じ質問をしてくる。

「暮れは帰って来るのか?」
「んー……悩んでる」
「……何故」
「あの家で独りで年越しするくらいならこっちで良くない?」
「……、……診療所に、くればいい」
「えー」
「嫌なのか」
「ああ、ごめん、嫌ってわけじゃないんだけどさ。普通に冬に帰るときって重装備で荷物も多くなるし食料買うのも大変だしでちょっと面倒なんだよね」
「うちに来ればいいだろう。食事くらい出せる」
「それ目当てにして帰るのもちょっとさあ」

一人に逢えるのはいいのだが、それはそれ、これはこれである。冬の旅行は荷物が多くなっていけない。
しかも家の雪かきをしなければいけないので帰ったら帰ったらでしんどいのだ。雪が降ると近所の人たちが雪かきをしてくれているそうで、菓子折りを引っ下げて夏に頭を下げに回っている。それはそれで面倒なのだが、雪かきを自分独りでしないといけないのも中々辛いものがある。

「去年みたいに出張依頼入ると帰るのしんどいんだよねぇ」
「そうか。……もしも帰ってくるなら連絡をしろ」
「…………うん」
「連絡くらいしろ」
「いや、うん。解った。頑張る」

正直疲れていると私生活で電話をするのも中々しんどいときがあるのだが、一人が毎度ここまで言うのならしょうがない。頑張ったけれどできなかったときもしょうがない。

そんな会話をしていたのが冬の始めだった。


***


か?』
「……一人?」
『夜分に突然すまん。この時間なら仕事が終わってると思ってかけたんだが、大丈夫か?』
「あ、うん大丈夫だけど、どうしたの」

独り暮らしの上に家族がいないので使う機会がめったにないのだが、一応固定電話を引いている。携帯電話が普及し始めているのでいつかなくせるかもしれないが、村では電波がほぼ通らないので結局固定電話を使うしかない。
営業の電話が多くて基本的に電話にはあまり出ないのだが、今日の電話は見覚えのありすぎる番号がディスプレイに映っていたので流石に取った。しかもだいぶ夜更けである。
聞き慣れているのに、機械越しだと違う人のような声に聞こえるので不思議だ。

『今年の積雪が酷くてな』
「あ~やっぱそうなんだ。ニュースでちょっと見た」
『ああ、バスが走らん』
「おわ~。年々酷くなってくね」
『そうだな。……帰ってくるつもりだったのなら、無駄足になってしまうからと、思ってだな』
「ああ、うん。ありがとう、助かる。でもそうかあ……家潰れなきゃいいけど」

雪の重みで潰れるなんて話よくある。そんなに積雪が酷いのなら住人のいない実家がどうなるのか怖すぎるが、住んでいたところで独りなのでそれもしんどい。

『雪かきはしといてやる』
「そっ……れは、流石に、申し訳なさすぎる……」
『いつも皆でやっているが』
「いや存じておりますが~~~!!! 申し訳ないんだよ! いいよ家潰れたら潰れたで!」
『どうせ誰かが気を遣ってやり始める。そもそも既にやっているんだ』

だから安心していい、と優しげな声で言われた。

(あ~~くそ~~この声好きなんだよな~~~)

優しく諭すようなこの声が、10代の頃から好きなのだ。
何でこんなにも包容力のある男がいるのだろうか。ガタイがよすぎて圧が強い上に、顔は整っているが眉が寄っていることばかりで強面だというのに。
けれども誰よりも人を救うことに対して真摯で貪欲で、エゴイストだ。

(だいぶ表情も柔らかくなって笑い方変わったんだよな)

それは生活に余裕ができたからかもしれないし、充実しているからなのかもしれない。どちらにしても自分ではどうにもならなかったことなので何とも言えない感情が渦巻いているが、一人が良い方向に向かっているのなら喜ぶべきだろう。
夏にも口から勝手に出ていたが、このまま幸せになってくれればいいと思う。

「いやでもさ~~流石に甘えすぎというか……」
『それであの家が潰れたら逆に面倒だろう。だから皆手伝うんだ』
「うー……」

正直な話やってもらえるならありがたいのだが、やってくれた人達に頭を下げに回るのがたいへん、とてつもなく、面倒なのだ。まあまだうちの村は皆仲がいいし、自分に対して好意的なので楽なほうなのだが。

「あ~解った。手伝ってくれた人達リスト出しといて……」
『ああ。風邪を引くなよ』
「一人こそ。……いや風邪引いたことないか一人は」
『子どもの頃にある』
「大人になってからないんでしょ健康体め」
『ふ』

そんな話をして電話を終えた。
二年連続で冬は帰れず雪かきを他人に押し付けてしまう体たらくである。頭を下げる準備を今からしておかねばならない。


***


年が明けて、冬が終われば春が来る。
大人になると時間の経過があっという間で、気づいたらそのまま夏だった。

(嘘じゃんもうすぐ8月なのか……)

この間一人と電話で雪かきの話をしていた気がするが、それがもう半年以上前なのだ。そんな馬鹿な。

「か、菓子折りの準備……」

一人が街に下りてきて治療を受けたときに、手伝ってくれたご家庭は把握している。去年と同じ面々だが、何を言われるのか怖くて今から胃が痛む気がした。少し高めの菓子折りを用意しなければならないが、それだけで懐がだいぶ寂しくなるのが辛い。

(一人のところにも用意しないとなあ。えーと新しい人って甘い物とか食べるのかな……)

去年は一人の医師免許の祝いもかねて少しだけいつもよりも大きな物を贈ったのだが、贈ってからそういえば成人男性が増えているのだと気づいた。大きい物を贈って結果的に良かったのだが、何だか祝い感が減ってしまっている。

「ていうか、去年掃除手伝ってもらったし、お世話になってばっかだし、今回別個で何か用意するか……」

一人には大層渋られたのだが、治療院に来たときに無理矢理ご飯のお金は返してはいる。最後の最後まで要らないと言われたが、そのとき着ていたスーツのポケットにねじ込んだ。一人は眉間の皺をエラい増やした顔をしていたが、そんな顔見慣れているので知らんぷりして「お大事にどうぞ~」で終わらせた。一人は人を殺せそうな顔をしていた。
それでも医師免許のお祝いとしては全くもってして足りている気がしない。気持ち的には大層祝っているのに、お返しのほうが大きいのだ。
何かまた贈らねば……となるのだが、毎年毎年、一人は何が好きなのだろうかという疑問が湧いてくる。

(嫌いな食べ物はないっぽいんだけど、じゃあ何が好きなのかって全く解らないんだよなー)

信じられないことにこれでも幼馴染なのである。自我が芽生える前から顔見知りという仲なのに、は一人の好きなものが全く解らない。表情が変わらないのもそうだが、あの男は医療以外で全くと言っていいほど趣味嗜好がない。食べ物なら出された物は何でも食べる優良児と言えば聞こえはいいが、好みがないようにも見える。
毎年変わり映えのないありきたりなお菓子の詰め合わせを贈って文句がないので、去年もそれの大きな物を贈ったが、正直喜ばれてるようには思えない。あの男は医学書や論文雑誌のほうが喜びそうだが、が贈る前に一人自身で手に入れているだろう。いっそ診療所で使えそうな包帯だのタオルだの詰め合わせのほうが喜ばれるかもしれない。

(……まあ、村の人に配ったりできるから、お菓子でいいか)

食べてもらえなくても、一人に贈るのが、とりあえず大事だろう。
一人とは付き合いが長いのに、こんなことも解らない。悔しくて堪らないが、お互いそういうことすら話さない仲ということだ。何でも食べるんだから何でもいいだろう、と昔は思っていたが、今はこんなことも知らずにいるのかと愕然とする。
そういうことを話せる人を、一人は見つけていくのだろう。自分ではやはり違うのだ。
けれども一人の好い人から「あの人これ苦手なんですよね……」などと言われようものなら泣きながら家に帰って吐くかもしれない。今考えただけで信じられないほど心臓が縮んだ。

(考えるの止めよ。気持ちを無下にする奴じゃないし)

そう自分に言い聞かせてはデパートに行く日を考えた。


***


何とかお盆休みは獲得できた。出張依頼も断ったし、街にはいないことを先に自分の患者たちには伝えた。村の人や一人に贈る菓子折りも個人的に奮発している。
去年は一人に何故か三日間連続で会うという謎のイベントが発生したが、あんなこと早々あるものではない。というかあったら困る。

(掃除する前提で服も選んでるから、ヨレたTシャツにジーパンとかだしな……)

色気もへったくれもないのだ。いや鼻を垂らしていた頃からの知り合いなので、今さら服装が貧相だろうとヨレていようと多分何とも思われないとは思うのだが。
それでもやはり、一応、これでも女である。
治療院の患者さんたちにヨレたTシャツ姿を見られるのも恥ずかしいが、一人に見られることが一番恥ずかしい。見られてしまったのだが。しかも汗だくである。
あと普通に自分がズボラなところも見せてしまっている。子どもの頃なら別に何とも思わなかっただろうに、大人になった上で好きな人相手だととても恥ずかしい。開き直るしか手がない。

(いつもは見送りの日くらいしか会わないんだけどなあ)

その日だけちょっと小奇麗にすれば良かったというのに、去年は毎日会ったので内心頭を抱えていた。一人と一緒に掃除をした日も少しだけ化粧はしたが結局すぐに汗で流れたし、そもそも使い古したTシャツで化粧ってどういう状況だよと自分で突っ込んでいた。
今年は流石にそんなことあり得ないだろう。あの人も忙しいのだ。

(いつも通りでいいか。スカート履くのは最後の日だけ)

気合を入れるのは、最終日に会うときだけでいいだろう。
そう考えていたのにまさかまた初日から一人に会うとは思っていなかった。



「ええ、何でいるの……」
「荷物持ちくらいしてやる」
「ええ……? 何言ってるの……」

バス停を降りる前から何かマントのデカイ人間がいるなとは解っていたが、何をしているのだろうかこの男。
今年は一人が治療院に来たタイミングで帰省の日を教えていたが、それにしたって何でここにいるのか。

「えっ? いや本当、何、待ってたの……?」
「昨日街のほうでICUのオペをしてその帰りなんだが、がそろそろだと思って待ってた」
「?????」

何言ってるんだこの男。
あと手荷物がいつも通り全く見当たらないので途端に不安になった。

「えっ、ちょっと水飲んでる!? これ口付けてないから飲みな!」
「ふ」
「何笑ってんの馬鹿なの!? さっさとそれ飲みながら帰りなって!」
「荷物を貸せ」
「いいから! あっちょ、ちょっと、荷物はいいから水飲んで!」

N県は夏でも涼しいが、それでも日差しはあるしこの男マント姿なのである。今乗ってきたバスの前からいるということは、最低でも一本前からこの男ここにいるのだ。涼しい部類の場所だが、昨日ICUのような緊急性のある患者のオペをして泊まってきた帰りの体力でこんな場所に何十分・何時間もいるなんて正気の沙汰ではない。
こちらの荷物を勝手に持とうとする一人を叱りつけて、水を飲むように促した。この男頭はいいのに何を考えているのか。
しかも何で今日なのだ。去年がイレギュラーだっただけで今年も適当な格好でいいかと思って帰省したらこれである。

(化粧落とすの面倒だったから化粧もしてないのに! バス停から村まで歩くから凄い適当な格好だし……!)

多少なりともあった女心はボコボコである。いや自分が悪いのだが。自分がズボラなのと面倒くさがりなのが悪いのはちゃんと解っているのだが。何でまた初日から顔を合わせるのか。
無理矢理水を飲ませれば、また一人が荷物を持とうとする。

「あ、いや、いいって。自分の荷物なんだから」
「前もそうだったが男の顔を立てられんのか?」
「知らんわそんなよく解らん理屈のツラ」
「……いいから」
「あっ、ちょっと!」

力では流石に敵わないのと、女扱いをされるのは普通に照れてしまうので手荷物をほとんど取られてしまう。両親の墓参り用の花だけ自分で持つという体たらくだった。

「……ちゃんと寝たの?」
「ああ、術後は落ち着いていたから病院ではほとんど寝ていた」
「はあ、もう。じゃあいいけど」

けれども夏のこんな晴れた日に待っていなくていいではないか。肝が冷えた。自分のせいで一人に何かあったら首を括っても責められるだろうに。
一人が健康体なのは解っているが、それでも睡眠が不規則な医者で一時期メンタルも落ち込んだのを見ている。超人的な男ではあるが、人間なのだ。当たり前だが血だって出るし寝なきゃ死ぬし病気にだって成り得る。全然想像がつかないが。この男自分の病気を自分でオペしていそうである。いや流石にそれはない。と思いたい。

「今年も二泊だったか」
「うん」
「村にいる間に鍼を受けてもいいか?」
「いいけど、いつがいい?」
「明日」
「あいよ。診療所に何時に行こうか」
「いい、俺がの家に行く。……この荷物だと、また足場を持ってくるのを忘れたろう」
「あっ」
「手伝ってやる」
「い、……や、いやいや、あの、待って大丈夫だから」
「そもそも掃除をして診療所に来るのは面倒だろう」
「それお互いさまじゃない!?」
「俺のほうが体力がある」
「そっ、おま、むっかつくな! そりゃそうでしょうよその筋肉で私より体力なかったら指さして笑ってるわ! そういう話じゃなくてだな!」
「相変わらず元気だな」
「取柄なんでねありがとうございます! ああもう本当頑固なの変わらないなあ……!」
「どっちがだ」

話をしていれば村に入り実家に着いていた。途中色んな人たちと顔を合わせて挨拶をし、相変わらず仲がいいとからかわれる。
一人はわざわざ玄関の中にまで入って荷物を持ってくれた。この男を荷物持ちにさせてしまい、K過激派などがいたら夜道で刺されるかもしれない。そもそもこの男自体がこの村では人気者なのだ。顔はいいし中身もいいし村唯一の医者なのだから人気が出ないほうがおかしい。

「明日また、10時に来る」
「いいよ。一人忙しいんだから、そんな時間あるならきちんと休んで」
「気にしないでいい。あとイシさんからスイカを貰ってるから持ってくる」
「ねえ人の話聞く気ある???」
「またな」
「あっちょっ」

家に上がることもなく本当に荷物を持って運んでくれただけだった。しかも持ってきた菓子折りすら渡すことを忘れているということに、旅行鞄を広げているときに気づいた。

(やばいどうしようまた一人に掃除をさせることになる。どうしよう)

村の人たちに何て言われるかが怖くて仕方がない。この優良物件の男を荷物持ちにしているのである。村八分にされても文句を言えない。
けれども一人も全く引かない頑固男すぎる。こんな家の掃除を手伝わずに村から出て女でも捕まえてくればいいのに。

(いや好きな人紹介でもされたら本当どういう顔したらいいのか解らないから、一人の口から結婚するって聞くだけ聞いて、式には出ない方向で……)

勝手に妄想をして話を進める。
早く一人には幸せになってほしいのだが、その幸せな姿を間近で見るのは覚悟が足りない。しょうがないではないか高校生の頃から好きなのだ。多分もっと前から好きだったのだろうけれど、自覚をしたのがその辺りだった。
頼むから早く結婚するという報告を聞きたい自分と、そんなこと言わないでほしいと願う自分がいる。ワガママが過ぎて、三十路も近い年になっても子どものままだと自嘲した。

「あ~~とりあえず布団干しとこ。掃除できるところはやっちゃおうもう。あーあ」

初日くらいはゆっくりしようと思っていたのにこれである。
しかもまた女を捨ててるような格好で会うことになるのだ。もう諦めるしかない。
どうせ、女として見られていないのだし。

(女独りの家に無遠慮に上がり込んでくるのって、そういうことでしょ。女として見られてないってことだよな。はあ)

馬鹿丸出しの子どもの頃からの幼馴染なのだ。そりゃそういう対象に見られないのもしょうがない。一人からしたらずっと馬鹿な幼馴染なのだろう。手を貸さないと駄目な、年下の忘れ物の多い幼馴染。
女独りの家に上がり込むが掃除をするだけで、治療を受けて暗くなる前には帰っていく。健全である。その間別にセクハラ発言があるわけでもなく、身体を触られるようなこともない。ドが付くほど健全である。
この村を出る前の一夜が本当に不思議だった。夢か妄想だったのかもしれない。朝起きたときに隣に一人がいたのできちんと現実ではあった。どれだけあのときの一人が弱っていたのかという話だ。
あの場にいたのが自分だったからで、別に自分じゃなくても良かったのだろうと、思う。
女扱いされると照れてしまうが、こうやって女として見られていないのは少しだけ悲しい。嘘だ結構悲しい。
けれども今さら一人の前で女らしくしろと言うのも無理な話である。少し小綺麗にするだけで精一杯で、何かをねだることも甘えることもできやしない。可愛らしい声も出せないし、そんな表情もよく解らない。しかも小綺麗にしようと思う決意も去年から粉砕され続けている。
自分の初めてを好きな男に貰われただけ、良かったのかもしれない。そう思うしかない。
そこまで考えて、何で一人がここまで世話を焼くのか理解した。

(初めて貰っちゃった責任感か……馬鹿だなあ)

本当に結婚するかどうか解らない女の初めてを貰ってしまったから、責任感があるのだろう。しかもその女が結婚せずにいるのだ。
医療に関しては柔軟性があるが、何だかんだ硬派な男なのでそういう責任感があってもおかしくない。
というか辻褄が合う。

(うわ~あれもこれもそういう責任感からか~……。あーあ、しんど)

毎回の帰省で見送るのも、治療院に来てくれるのも、こうやって世話を焼くのも、責任感からだと思えば理解できてくる。いざとなったら結婚する相手なのだから、機嫌を損ねないようにというのもあるのかもしれない。
けれども別に女として見てるわけでもないのだろう。そういう対象として見ていないから、男女のそういう雰囲気にすらならないのだと考えれば納得がいく。一人以外の男を知らないのでよく解らないが。
やっぱりあの一晩は気が弱っていて、その場にいたのが自分だったからだろう。そういうことだ。何だか全てに納得がいって、脱力した。

(も、いいか。来るなら来るでいいし、あっちから手伝うって言ってるならもうそれでいいや)

責任感の強い一人が、それで満足しているのならもうそれでいいだろう。あっちがある程度満足したら多分こんな掃除だの見送りだのも終わるはずである。自分が35歳過ぎたら終わる気がする。高齢出産になるからだ。
その前にさっさと好い人見つけて無駄な責任感を下ろしてほしい。あともう責任感を持つよりもあの一晩を忘れてほしいくらいだった。自分だけが覚えていればいいではないか。

そのあと何とも言えない気持ちで家の換気をして布団を干し、雪かきをしてくれたご家庭に挨拶に回り、花がしおれてしまう前に両親の墓参りをし、何とかケツを叩きながらできる限り掃除をしたら疲れ果てて何も考えずに寝ていた。