「…やっぱり、遅くなるから待ってなくて良いですよ」
先に帰ってくださいと、鷹は若干声のトーンが落ちながらに呟いた。
鷹の部活を終わるまで図書室で待っていてくれるのはとてもとても嬉しいし幸せなのだが、帰り道は乗り換えの駅までしか一緒じゃないから、この夜遅い時間は心配でしょうがない。自分が送って行ければ良いのだが、部活が終わってからだとどうしてもそこまでの時間がない。何よりアルバイトもやっていない高校生にはとても辛い。金銭面的に。
「やだ」
「…先輩」
「やーだ。駄目。待ってるって決めたのは私なの」
「でもこんな時間遅いし」
「図書室で勉強してるんだから、別に無駄な時間じゃないよ」
「そうじゃなくて」
「友達と話し込んでたらこんな時間になってるなんてしょっちゅうなんだから」
「そうかもしれませんけど」
「大丈夫だよ、最寄りの駅からはバスなんだし」
「……本当ですか?」
「うん」
鷹のほうを向きながらは大きく頷いた。ああもうこんなのも可愛いんだから先輩はズルいなんて鷹は思ってるがおくびにも出さない。
赤くなった顔が見られてませんようにと、頬が熱いのを気にしていたら、が更に続けた。
「…っていうかね、ちょっとくらい彼女らしいこと、させてよ」
「………」
「ね」
「…明日、また部活終わったら図書室行って、良いですか?」
「うんっ」
一個しか違わないのに、先輩に敵わない。鷹は真っ赤になりながら俯いた。