寝癖


膝枕をしている間、暇だから何となく一人の髪の毛を撫でたりする。
一人に何も言われないので好きにしていた。気になって眠れないなどと言われればすぐさま止めるが、本当に何も言われないし、ピクリとも動かないのでそのまま撫で続けている。暑いときは団扇で風を送っているし、暇なときはこうやって髪の毛を撫でている。本を読むときもあるが、何となくこの男が膝で寝ているのが嬉しいような恥ずかしいような、何とも言えない感情を持つのでジッと見ていたりもする。

無心で色々考えていれば一人の額が汗ばんできていた。山なのでクーラーは要らない気温だが、一人の体温と代謝の高さ的にこうやってすぐに汗をかきはじめる。膝枕をしているのだから余計だった。お互い汗をかいたりするので膝枕はしないでもいいのではないかとは思うのだが、一人は傍にいるのを強要する。嫌ではないし実家の掃除を終わらせればすることもないので、言うことを聞いていた。でもやっぱり暑い。
団扇で自分と一人をあおぎ、一人の額に貼り付いた髪の毛を撫でてどかした。
恋人ってこんな感じなのかな、と思うが、既に籍を入れているので新婚ではある。そう考えればこんなものなのかと納得してしまうので、の知識やイメージもその程度だった。

そんな風に過ごして、ある程度時間が経ったら足が辛くなってきて一人を起こして終わる。
起き上がった一人を見て、は慌てた。

「うわーごめん髪の毛乱れてる」

汗をかいているのを見て髪の毛をかき上げたのが、そのまま寝癖のようになってしまっていた。
一人はそれを聞いて手を動かすでもなく、自分の頭をに向けて下げて口を開いた。

「直してくれ」
「ええ……」

自分でそれくらい直せと言いたいところだが、もしかして寝ぼけているのかもしれない。そろそろこの男が甘えてこういうことをしているのだと気づいてはいるので、戸惑いはするもののは頼まれた通りにしてしまう。甘すぎるとは思うが、で叶えられるようなことしか言わないので対応してしまっていた。別に嫌ではないので構わないだろう。一人がこんな風になるのも何というか、新鮮であり両想いというものを感じられてちょっと嬉しいのもある。恥ずかしさもあるので絶対に人前ではやりたくないが。
頭を下げている一人の髪の毛をは直すが、少し汗をかいているのでいつものようにはならない。いつもどうだったか悩みながら指を通す。

「ええ~戻んないよこれ」
「大体でいい」
「こんなんだっけ……」

汗で少し髪の毛が湿ってるせいで元通りとはいかない。頭の中で疑問符を浮かべながらは手を動かすが、何だか悪化している気もする。鏡でも渡したほうが絶対に早い。

悪戦苦闘している間、一人がずっと笑っていたのには気づかなかった。