「……むぅ……」
起きてしまった。まだ寝ていたいと思ったが、尿意を感じて起きるしかない。
一人に抱かれたあと裸のままだったので、とりあえず自分の服を着ないといけない。ここにTシャツがあったはず……と手を動かし、もぞもぞと着ていく。何か予想と違う着心地だったが、トイレに行きたかったのでは気にせず立ち上がった。
「……俺のを着て行ったな……?」
隣で寝ていた一人がの動きで起き、その一連を見ていた。自分のいつものTシャツを、が寝ぼけて着て行った。別にになら構わないが、はそれでいいのだろうか。
そもそもTシャツだけ着て下半身は下着以外つけずにいたが、いいのか。いや、自分しか今この家にはいないのでいいのだが。はそれで、いいのだろうか。自分のTシャツがほぼ隠していたのでいい、のかもしれない。
トイレから帰ってきたは寝ぼけたまま、一人が起きているのにも気づかず布団に入ってきてそのまままた眠りに落ちた。
一人のTシャツを着たままだった。
「…………」
起きたら自分の着るものはどうしようか、と思いながら、一人もまた眠るために目を閉じた。
***
「――、起きたか?」
「ん~~……おはよう……」
「ああ、おはよう」
「ん……、ん!?」
起き上がって一人のほうへ顔を向ければ、一人の上半身が裸だった。珍しくて二度見した。下は履いているが、この男が布団から出ているのにそんな格好するなんて、抱かれるようになってから初めて見た。
「何、珍しい。どうしたの、暑かった?」
「……気づいてないのか」
「え?」
一人が自分を指さしてくるので、何だろうと思えば、自分が着ている服が一人の着ていたTシャツなことにはようやく気づいた。
「――えっ!? あれ!? え!?」
「……朝方に起きたときに着ていっただろう」
「え、あ、……あっ!? えっ嘘あれ一人のだった!? 自分の取ったと思ったごめん!」
「まあ、それは構わんが」
「え~嘘ごめん、返……したところで意味ないか、どうせこれ洗うやつだよね?」
「ああ」
「ご、ごめん……」
「? 別に構わん。どうした」
「一人こういうの潔癖そうだから……」
「……これくらいは、別に何も言わん」
富永や俊介にも潔癖そうだと言われたことがあるが、にもそう見られていたとは思わなかった。所謂潔癖症な人間が医者をやったり、パートナーを抱いて一緒に住むのかと聞きたい。
「ほんと? ……へへ、彼シャツだ」
「か……?」
「え、あ、えーと、彼氏のシャツを彼女が着るやつ……? あれ? 合ってるかなこの説明」
「……理解はした」
「着たとき何かいつもと違うなと思ったけど、やっぱり大きいねえ」
「…………」
それはそうだろう、という顔を一人はした。当たり前のことを何故言うのか。
「でもTシャツだと思ったよりも大きいって感じならないね。Yシャツだともっと違うのかな」
「ああ、……丈と袖が変わるだろうな」
「あ~なるほど」
だから漫画の中とかだとYシャツが多いのだろうか。そもそも漫画の中だと一般的なスーツの大人が多いせいかもしれない。一人のTシャツの丈を見ながらはそんなことを考えた。
「一人Yシャツ着ない……あれ? 着ないよね?」
「脱ぎ着に時間がかかるから普段はあまり着ないな」
「ああ、なるほど」
緊急オペになったときに面倒くさいので着なくなったのだが、そもそも肩周りがきつくて腕が挙げにくくなるので、あまり普段から着ることがない。
だがが自分のTシャツを着ている姿を見ていると、Yシャツを着ている姿がどうなるのか気にはなる。
「……次に逢うときにでも、着て行くか?」
「そ、れは……いや、あの、着たいわけじゃ、ないし……」
「俺が着て行くか聞いただけだが」
「……!!」
がTシャツの裾を握って弄っているのを見ながら、一人はからかうような物言いになってしまった。着て行ったらが今度はYシャツを着るかどうか考えはしたが、今のは自分が着て行くか聞いただけである。
真っ赤になったを見ながら、が街に戻ってからまた逢うときは、Yシャツを着ようと一人は今から決めておいた。